連載:プロ野球みんなの意見

ワンポイントリリーフ禁止に賛成? 反対? スポナビユーザーの調査結果は意外にも……

前田恵

「ワンポイントリリーフ禁止」賛成派の声

野村克也監督時代の阪神で見られた継投策「遠山→葛西→遠山」は語り草だ 【写真は共同】

 ここからは、ユーザーの意見を紹介していこう。まずは「ワンポイントリリーフ禁止」賛成派から。

「左投手を苦にしない打者が増えてきたので、時間の無駄です」

「ゲームのスピードアップにも貢献できるし、何よりも投手の力量アップにつながる」


 時間に関する意見は、賛成派の多くから聞かれた。また、ワンポイントリリーフで登板する“左キラー”に、かつてのような希少価値、存在価値がなくなったのではないかという意見もあった。

「間延びして盛り下がる。監督が目立ちたいだけ。野村阪神時代、すごく盛り下がった」

 おそらく、このユーザーは野村克也が阪神の監督時代に行っていた継投策「遠山→葛西→遠山」のことを思い出したのだろう。これは、左腕の遠山奬志が降板すると一塁の守備につき、マウンドには右サイドスローの葛西稔が上がる。そして葛西が打者を1人打ち取ると遠山とチェンジするという、現在ではなかなか見られない継投策のことを指す。

「試合時間も長くなり、観戦しているファンも面白くないと思っています。1人だけとの勝負をして帰る投手の姿を見ていて、寂しさを感じます」

「リリーフピッチャーが数球でマウンドを降りてしまうのは、ピッチャー本人がかわいそう」


 先発完投こそ投手の華と言われた時代は過ぎ去り、現在は投手の分業制が確立されている。与えられた仕事を全うするため、ワンポイントリリーフの左投手も自身の役割に誇りを持って、マウンドに上っているはずだ。しかし、こうした左のスペシャリストに対しても、もっと長いイニングを投げてもらいたいという思いを抱くファンも、一定数いることがわかった。

「試合のテンポが悪くなる」

「何回も投手交代されるとつまらない」


 リリーフ投手を小刻みにつないでいく“マシンガン継投”にストレスを感じるファンもいる。継投の度に試合がストップし、おまけにチャンスを潰されてしまっては、攻撃側のファンにとってはたまったものではないだろう。

「ワンポイントリリーフ禁止」反対派の声

福岡ソフトバンクの嘉弥真新也は主に左のワンポイントとして、17年から5年連続で50試合以上に登板している 【写真は共同】

 続いて、圧倒的多数を占めた「ワンポイントリリーフ禁止」に反対するユーザーの声を紹介しよう。

「それも含めて継投の妙」

「チームの選手起用にまで干渉するのは行き過ぎ」


 反対派の多くに共通しているのは、「ワンポイントリリーフ」は野球の醍醐味(だいごみ)のひとつであって、継投の戦略として肯定的に捉えているということだ。

「禁止にする根拠、理由がないと思うから」

「禁止することが試合時間短縮には繋がらないことがメジャーで証明されているから。ワンポイントの勝負を楽しみにしている人は多い」

「野球は戦略。ワンポイントだろうと勝つためには必要。時間ばかり気にして本質を見誤らないでほしい」


「Three-batter minimum」ルールが試合時間の短縮を目的にMLBで導入されるも、結果に結びついていないことはすでに述べた。また、左のスペシャリストが登板するのは、試合を決定付ける終盤の重要な場面が多いことから、その勝負を楽しみにしているというファンのコメントも見られた。確かに、塁上が埋まった状態で左の強打者と対峙(たいじ)し、見事打ち取ってマウンドをさっそうと下りる姿は、“必殺仕事人”の風情を感じさせるものがある。

「試合時間の短縮をしたいなら、イニング間を高校野球くらい短くすればよい。つまらない理由で一部の選手の生命を奪うのは、選手ファーストではない」

「これ、ワンポイントで使われて嫌って言う人いるのかな? 投手側からしたら、使ってくれてありがたいと思う」


 このように、選手のことをおもんぱかるコメントも散見された。「ワンポイントリリーフ禁止」に反対するファンにとって、試合時間を短縮させることはさほど重要ではない。それよりも、指揮官が見せる継投の戦略と、それに応えようと奮闘するリリーフ投手がマウンドで見せる姿に、魅力を感じているのだから。

(構成:スリーライト)

参照元

参照したホームページ、記事(外部)

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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