連載:憲剛と語る川崎フロンターレ

中村憲剛×小林悠×登里享平×大島僚太【前編】 歴史を伝える大切さ【憲剛と語る川崎フロンターレ04】

原田大輔

連敗しているなかで躍ったダンスの思い出

10年以上の付き合いになる中村憲剛氏、小林悠、登里享平、大島僚太は青空のもと、終始リラックした雰囲気でトーク。笑いあり、涙ありで話は尽きなかった 【佐野美樹】

――モチベーションを上げるために今でもJ1初優勝の映像を見返すことも?

小林 ありますね。そのあと、何度も優勝を経験していますけど、あのときの感動は超えられない。久しぶりに映画でそのシーンを見たときにも、やっぱりボロボロと涙が出てきましたから。よみがえるんですよね。(J1初優勝したときに)憲剛さんを探して、抱き合った瞬間のことを思い出すと、すぐに泣けるくらい……。

憲剛 あのときは悠もそうだし、ノボリ(登里)も僚太も、自分のところに来てくれたよね。自分も号泣していて、来てくれたのが、誰が誰だか分からなかったけど、あとで確認したとき、うれしかったなぁ。J1初優勝の瞬間もそうだけど、ノボリが話してくれた地域貢献活動のことや、僚太が話してくれたガラガラのスタンドの光景をはじめ、今回、クラブの歩みを映像として可視化したことに意味があると思っているんだよね。

登里 新人研修のときに、そうした歴史について聞く機会はありますけど、映像で見ると。

大島 よりリアリティーがありますよね。

登里 (00年に)クラブとして初めてJ1に昇格して、『ここから頑張っていこう』というタイミングでJ2に降格してしまい、観客が減ってしまったことを知らない選手もいると思うんです。憲剛さんが加入した(03年の)ホーム開幕戦。雨が降っていましたけど、みんな屋根の下で観戦していましたもんね。

憲剛 屋根の下に移動できるくらい観客が少なかったってことだよね。

登里 今だったら、雨に濡れてまでもファン・サポーターは応援してくれるので、なおさら感謝しますよね。

大島 僕が加入した時期のことを思い出しても、やっぱり想像できないですからね。

――憲剛さんは03年から18年間在籍、登里選手は今季で在籍13年目、小林選手は12年目、大島選手は11年目になります。自分が加入した当時のフロンターレを思い返すと、どんな状況でしたか?

大島 僕が加入するときには、誰もが知っているチームになっていました。僕は静岡県出身ですけど、地元の清水エスパルスと同じくらい選手個々の名前を知っていた。それくらい名前と顔が一致するチームという印象でしたね。

小林 攻撃的なチームというイメージも、すでに確立していたように思います。

大島 確かに攻撃的なサッカーをするイメージも持っていましたね。

憲剛 もう、そういうイメージができているときだったのか。フロンターレは自分が高校2年生のときにできているんだけど、実は俺、高校生のときはフロンターレのことを知らなかったからね(笑)。

登里 実は僕も高校生のときは、あまりフロンターレのことを知らなかったんですよね。00年にフロンターレがJ1を戦っていたときに、勝てばセレッソ大阪がステージ優勝を決めるという試合で、フロンターレが阻んだことがあったんですよね。当時の僕はセレッソを応援していたので、それを阻止した相手として名前を知ったくらいです。

小林 そのときは、ふざけんなよって思った?(笑)

登里 そこは内緒(笑)。あとは高校1年生のとき、香川県で天皇杯の試合が行われて、フロンターレが来たんですよね。ヴァンフォーレ甲府との試合だったと思います。その試合で僕、ボールボーイをしたんです。

小林 フロンターレかよって思った?(笑)

登里 そこも内緒(笑)。当時から憲剛さんのことは知っていましたよ。でも、他の選手といえば、テセさん(鄭大世)くらいだったかなあ。

憲剛 高校生のときって、特に自分のサッカーが一番、忙しい時期だからね。そう聞くと、ある程度、クラブやチームができあがってきた時期に加入しているんだね。ノボリは09年の加入だから、関さん(関塚隆)が率いてきたチームが集大成を迎えた時期だったけど、まさに悠と僚太の加入時はチームにとっての過渡期だったんだよね。

小林 ありましたよね。地獄のようなリーグ戦8連敗……。

大島 それ、まさに僕が加入した1年目、2011年でしたよね。

憲剛 あれは本当にきつかった。しかも、1年目だったけど、僚太はちょこちょこ試合に出てたよね?

大島 出てました。当時はチームの雰囲気まで見る余裕がなかったので、自分に矢印を向けて頑張ろうと思っていたんですけど、8連敗したヴィッセル神戸戦のあと、悔しくて勝手に涙が出てきた記憶があります。こんなにも負けた経験がなかったので。

憲剛 その試合、俺はケガをしていて出ていなかったんだけど、よく覚えてる。試合後に僚太、泣いてたよね。

大島 はい。なんでこんなに勝てないんだろうって思ってました。

憲剛 ルーキーを泣かせたうえに、そこまで思わせてしまうというね……。

登里 でも、確か、連敗期間中にファン感(ファン感謝デー)があったんですよね。

小林 そうそう。連敗中のなかで僕はキレキレのダンスを見せてる(笑)。

大島 アンパンマンになったときですよね(笑)。

小林 そうそう。心の中では、連敗中なのにいいのかなと思いながらも、やり切ったんだよね。

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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