憲剛さんのように車にサインをする存在に 猶本光×中村憲剛スペシャル対談【後編】

原田大輔

念願でもあった中村憲剛さんとの対談が実現したとあって、猶本光は読み込んできた憲剛さんの著書『ラストパス』を持参して取材に参加してくれた 【スポーツナビ】

 三菱重工浦和レッズレディースの中盤で輝きを放っている猶本光の希望により、実現した川崎フロンターレのレジェンド・中村憲剛との対談。後編では開幕したばかりのWEリーグに向けて中村からの熱いメッセージと、猶本が感じているプロ化したことによる意識の変化、さらには地域との関係性などについて思いを交わす。

WEリーグ開幕で感じる意識の変化

中村憲剛(以下:中村) (前編では)いきなりプレーの話をしてしまいましたけど、僕から聞きたかったこととしては、ヨーロッパでのプレー経験もある猶本さんから見て、WEリーグの開幕をどう感じていますか?

猶本光(以下:猶本) いろいろな状況があるなか、このタイミングでWEリーグの開幕に踏み切ったわけですが、プロ化してくれたことで、まずは選手たちにとってサッカーが仕事になりました。それによって、みんながサッカーについてより真剣に考える契機になったと思っています。どうすれば自分たちの試合を見に来てもらえるかということもそうですけど、プロになったからには、より結果を残さなければならない環境になりました。結果を残さなければ、契約してもらえない厳しい世界ですからね。そこも含めて、選手の意識が変わったのではないかと自分自身は感じています。

中村 プロ化したことでさまざまな部分が変わったと思います。月並みな質問ですけど、練習時間も変わりましたか?

猶本 レッズレディースは変わりました。基本的には午前中に練習しています。

中村 それまでは仕事が終わる、午後からが多かったんですか?

猶本 そうですね。今も仕事をしている選手もいますが、彼女たちに話を聞いても状況は良くなっていると言っていました。あと、これまでは人工芝で練習していたのですが、今は天然芝でも練習をさせてもらっているので、試合のときに違いを感じています。

中村 試合は天然芝ですもんね。プレーする感触としては、かなり違うかもしれないですね。

猶本 そうなんです。だから、試合にもスッと入れている印象はあります。

開幕したWEリーグでレッズレディースは連勝中。初代女王に向けて猶本はチームをけん引している 【Getty Images】

――プロサッカー選手として、日々ピッチ内外でやれることを模索しているかと思います。先輩として憲剛さんからアドバイスできることはありますか?

中村 WEリーグ開幕前の研修会でも、講師としてお話させてもらったのですが、プロである以上、ピッチ上でのプレーを突き詰めるために24時間を使ってほしいですね。そのうえでピッチ外のところで地域貢献や社会貢献活動もやるべきだと伝えさせてもらいました。

 ただ、やらなければいけないとは言いませんでした。なぜなら、WEリーグは始まったばかりだからです。選手のみなさんも、そこまでまだ余裕がないと思うんですよね。急にいろいろなことに手をつけてしまうと、肝心なピッチ内の部分に影響を及ぼしてしまうかもしれない。ピッチ内でのプレーこそが一番大切なので、徐々に徐々に、できる範囲内でやるべきこと、やれることを広げていく方がいいのではないかと話をさせてもらいました。

猶本 そう言ってもらえると、選手としても気持ちが楽になりますし、まずはプレーが大事だと思うことができます。

中村 一方で、自分たちが誰に支えてもらっているかを認識することも、とても大切だと思います。レッズレディースは、浦和レッズという男子チームがあるので、そのベースもあると思いますが、浦和の人、埼玉の人に支えられながら自分たちはプレーしているという自覚を持ってほしいなと。その思いがあれば、24時間のうち1時間を地域やファン・サポーターのために費やすことは可能だと、僕は思ってきました。ただ、それもWEリーグが開幕した今ではなく、徐々にでもいいと思っているんです。

猶本 三菱重工浦和レッズレディースとしても、浦和レッズというビッグクラブはありますが、レディースとしても土台を築いていければと思っています。浦和レッズや川崎フロンターレも含め、地域の人に応援してもらえるチームになっていきたいと思っていますし、そこはレディースの選手たちみんなもクラブに伝えているんです。

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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