千葉ロッテ常勝軍団への道〜下剋上からの脱却〜

「変革の息吹」〜球団に集うキーマンたち 見つめ直した千葉ロッテの強みと弱み

長谷川晶一
「千葉ロッテマリーンズ理念」を発表し、それを基に策定されたチームの中長期的なビジョンやメッセージをまとめた「Team Voice」を表明した2021年のマリーンズ。1974年以来、47年ぶりのシーズン勝率1位での優勝に向けて、グラウンドでは日々激闘が繰り広げてられている。そのような中で届ける全4回の連載の第1回は、変革の息吹が芽生えはじめるところから。(文中の敬称略)

井口資仁監督からの直々の電話

47年ぶりのシーズン1位まであと少し。首位に立つチームを率いる井口監督 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

(ああ、だから勝てないんだな……)

 2018(平成30)年、千葉ロッテマリーンズのヘッドコーチに就任した鳥越裕介(現二軍監督)の最初の印象だった。06年シーズン限りで現役を引退して以降、07〜17年の11年間にわたって、福岡ソフトバンクホークスの指導者として「常勝軍団」の強さを目の当たりにしてきた。その鳥越が、18年当時の心境を振り返る。

「チーム全体の雰囲気が最初から勝負になっていない。自分たちのことを信じていない。自分たちが勝てると思っていない。そんなことを最初に感じましたね。とにかく、“相手がすごい”とか、“自分たちは足りない”みたいな感じなんです。だったら、“じゃあ、どうすればいいのか?”と考えればいいんだけど、それもない。そもそも、何をすればいいのかすらわかっていなかったんです」

 長年、慣れ親しんだ福岡を去り、新天地として千葉を選んだ。それは、この年からマリーンズの指揮を執ることが決まっていた井口資仁による直々の誘いがきっかけだった。同一リーグ間での移籍。鳥越は「千葉」という土地に縁もゆかりもない。井口の著作『もう下剋上とは言わせない 〜勝利へ導くチーム改革〜』(日本文芸社)には、こんな一節がある。

 僕が鳥越さんに伝えたメッセージは
「一緒にホークスを倒しませんか?」
だった。

「ホークスは確かに良いチーム。強いです。でも1チームだけが強いプロ野球では面白くないでしょう?」


 このときの心境を鳥越が振り返る。

「もともと、福岡から離れるとは思っていませんでした。自分がマリーンズに行って何ができるのかもわかりませんでした。でも、今までずっとやってきた仲間と反対の立場になって、それを倒しにいくのも面白いのかなという気持ちもありました。最終的な決め手となったのは彼に誘われたからですよ。人と人とのことなので」

 こうして、18年シーズンから、「井口監督、鳥越ヘッドコーチ」による新体制がスタートすることとなった。

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著者プロフィール

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)、『基本は、真っ直ぐ――石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)ほか多数。

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