二兎を追う革命児・バドミントン渡辺勇大 世界的に希少、2つのメダルを狙う

平野貴也

バドミントンの男子ダブルスと混合ダブルスの2種目でメダルの可能性がある渡辺勇大。バドミントンにおいて渡辺のような選手は珍しい 【Getty Images】

 二兎を追う者が、歴史を変える。東京五輪でメダル量産が期待されるバドミントン日本代表には、一人だけ、2種目でメダルを狙う選手がいる。24歳のサウスポー、渡辺勇大(日本ユニシス)だ。18日の入村式で、渡辺は「ワクワク、ドキドキしています。不安になっても仕方がないと思うので、やり切ることを大事にしたい」と初の五輪出場を迎える心境を語った。遠藤大由(日本ユニシス)と組む男子ダブルスで世界ランク4位、東野有紗(日本ユニシス)と組む混合ダブルスで世界ランク5位。両種目にメダル候補として臨む。古い時代には、強豪選手が2種目で優勝することもあったが、BWF(世界バドミントン連盟)ワールドツアーの過密化や各種目の専門性向上により、いまや2種目を掛け持ちして、なおかつ世界トップレベルで戦える選手は、世界的に希少。五輪で2つのメダルを狙える位置にいるのは、渡辺だけだ。
 

国技とするインドネシアでも「アイツは天才だ」の評価

経験豊富な遠藤と組む男子ダブルスでも世界で結果を残してきた 【Getty Images】

 1つのコートでネットを挟んで合計4人が入るダブルスという種目は、シングルスに比べてスペースが少なく、展開が早い。スピーディーで細やかな動きが必要になる。

 中学時代(富岡第一中、猪苗代中)に指導していた、ふたば未来学園中の齋藤亘監督は「体が小さくて細く、下級生のうちは、まだそれほど勝てる選手ではありませんでした。でも、ラケットワークは器用。スピードのあるプレーの中でもフェイントを使い、相手の裏を突けるのが、彼のすごいところです」と才能の片りんをうかがわせていた当時の印象を振り返った。

 その素質は、海の向こうでも評価された。中学3年のときにバドミントンを国技とするインドネシアへ遠征した際もなかなか勝てなかったというが、齋藤監督は「観客から人気があり、向こうのコーチからは『アイツは天才だ。インドネシアにもああいう選手がほしい』と高く評価されました。まだ日本で成績を出す前の話です」と続けた。

 中学・高校時代は男子ダブルスがメイン。その中で、同じ学校で1学年上の東野と混合ダブルスを組む機会が生まれた。世界ジュニア選手権に出場するなど、国内の学生が目指す全国中学校大会やインターハイでは採用されていない希少な種目で飛躍の可能性を広げていった。

 高校を卒業した2016年、東野が在籍していた日本ユニシスに入社。同時に、その年のリオデジャネイロ五輪に出場していた遠藤が、パートナーの早川賢一の引退によってペアを解消することになったことを受け、渡辺が新たなパートナーに名乗りを挙げ、2種目での世界挑戦が本格化した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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