連載:プロ野球・スポナビ的新人王レース<中間発表>

広島の敏腕スカウトが説く新人の成功法則 森下、栗林に次ぐ今秋ドラフト注目株は?

瀬川ふみ子
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伝家の宝刀フォークが冴えわたり開幕から快投を続ける栗林。広島の新守護神に定着し、即戦力としての実力を遺憾なく発揮している。 【写真は共同】

 2019年ドラフトでは森下暢仁投手(明治大)を一本釣りし、初年度から2ケタ10勝の末、新人王受賞。2020年ドラフトでは栗林良吏投手(トヨタ自動車)を一本釣りし、守護神として開幕から22試合連続無失点の球団新記録を達成するなど、ここまで防御率0.37、12セーブと大活躍。森下とともに東京五輪の日本代表「侍ジャパン」にルーキーとして唯一選出された。
 そんな見事なスカウティングが続く広島東洋カープの苑田聡彦スカウト統括部長に、今年、新人王争いをする選手たちの印象を聞いた。また、苑田スカウトが考える新人選手の成功法則、さらに、今秋ドラフトの現時点での注目株についても明かしてくれた。

方針通りのドラフト補強ができている

鋭い眼力を持つ百戦錬磨の苑田スカウト統括部長が、プロで活躍できる選手の法則を語ってくれた。 【撮影:スリーライト】

――見事なスカウティングが続いています。敏腕スカウトの目が光っていますね。

 ウチは、伝統的に高校生を獲得し育てて使っていき、その中で、思ったように伸びなかったポジションのところに大学生・社会人から選手を補強するというチームの基本的な考えがあります。2017年は中村奨成、2018年は小園海斗と、基本通りに高校生を1位指名。2019年は、佐々木朗希、奥川恭伸の両投手がいましたが、即戦力投手が欲しいということで大学生の森下暢仁。2020年も同じく即戦力投手が補強ポイントだったので、一番評価していた社会人の栗林良吏です。4年目の中村、3年目の小園も成長していますし、2年目の森下も順調。今年の栗林も期待以上の活躍をしてくれています。

――昨年のドラフトで超目玉と注目された早川隆久投手(楽天)、佐藤輝明選手(阪神)ではなく、栗林投手を1位指名した理由は?

 早川投手も佐藤選手も抜群に良かった。でも、栗林も抜群に良いです。何より、即戦力で使えると思いましたし、ウチに一番合うと思いました。キャンプを見て佐々岡(真司)監督が抑えで使うと判断したんですが、適任でした。もともと先発完投型の投手が、1イニングを抑えればいいから気持ちも楽なんでしょう。社会人のときより、さらに速い150キロ前後を投げています。

――2位指名の森浦大輔投手も、3位指名の大道温貴投手も活躍しています。

 昨年のドラフトで獲得した投手は、みんないいですよ。森浦、大道もいいですが、4位の小林樹斗もいい。投げ方がいいし、ハートも強い。高卒ですが、順調にいけば、後半戦(一軍の試合に)出てくるかもしれません。

予想通りと、予想以上のルーキーたち

昨年のドラフトで4球団から1位指名を受けた早川は、前評判通りの実力を見せ、パ・リーグの新人王レースをけん引している。 【写真は共同】

――今年は、新人の活躍が目立っています。早川投手や鈴木昭汰投手(千葉ロッテ)、伊藤将司投手(阪神)など、他球団の投手たちの活躍をどう見ていますか?

 早川投手は、スピード、球のキレ、コントロール、変化球、駆け引きなどから、10〜15勝はできるという評価はしていたので、予想通りですね。今後、打たれたり、勝てなかったりするときもくるでしょうけど、精神的にも強いし、這い上がってくるでしょう。

 鈴木投手は、パ・リーグには左打者が多いのもあって、それを打ち取れているのが大きいかな。また、大学では自分で8、9回投げないとチームが勝てないというのがありますが、プロでは5回100球を投げて抑えたら勝てることもある。そういう点も結果につながっているのかなと思います。

 伊藤投手は、正直、ここまでやるとは思っていませんでした。どちらかといったら中継ぎタイプかなと見ていましたが、抜いたような球を投げるなど、ピッチングのうまさがあるのでしょう。

――新人王候補という中では、2年目の宮城大弥投手(オリックス)が活躍しています。

 宮城投手は高校のときから良かったですね。リーグが違うので、プロ入り後はあまり見ていないですが、体が大きくない中で、故障せずに頑張っているなと思います。

――同じ2年目では佐々木朗希投手(千葉ロッテ)も一軍で投げ始めました。

 先発した試合をテレビで見たのですが、フォームが小さくなってこじんまりしたというか、スケールが小さくなりましたね。高校のときの方がずっと魅力があった。やはり、プロではちょっと甘く入ると打たれるからコントロールを気にしているのでしょう。

――野手では、阪神の佐藤選手がここまで16本塁打、44打点と新人とは思えぬ活躍を見せています。
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