ベイスターズ再建録―「継承と革新」その途上の10年―

バトンを受けた「勝祭」の成功 DeNAの名物となった、日本一長い始球式

二宮寿朗
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柳沢慎吾さんの「日本一長い始球式」はベイスターズの名物となった 【横浜DeNAベイスターズ】

 2013年の「STAR☆NIGHT」によって意識が変わった人がいた。

 DeNA体制に切り替わるタイミングで横浜出身とあって東北楽天ゴールデンイーグルスから転職してきた鈴木淳である。 MD(マーチャンダイジング)を任されていた。ベイスターズグッズを取り扱う部署の責任者として、球団初となるスペシャルユニフォームの配布には当初、反対だった。

「やっぱりグッズが売れなくなるんじゃないかっていう懸念がありましたから。初年度(2012年)の『STAR☆NIGHT』は配らない形でやってみて、2年目にやるとなってからも私のなかでは完全に腹落ちしていなかった。でも実際に何が起こったかと言うと、ほかのグッズの売り上げがかなり上がったのです。自分の部署のことだけにこだわっていちゃダメだなって思わされました。自分は正しいことを言っていると思っても、そうじゃなかったりもする。もっとほかの人の意見を、周りの意見を受け入れてやってみたらもの凄いことができた。あの成功体験は私にとっても非常に大きなものでした」

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 最終日に3万人を突破したスタジアムの光景は壮観だった。勇気をもらった気がした。確かにペンライトを投げ込まれて後味は悪かったかもしれないが、希望の光が見えた気がしていた。

 これまで失敗となったイベントは多々あった。鈴木は2012年の夏休み前に「シャボン玉ホリデー!!」と題してシャボン玉を一斉に飛ばすという斬新な企画を試みている。しかし評判は散々であった。

「シャボン玉を一斉に飛ばしたら、ほかのお客さまの食べ物や飲み物に入ってしまって、クレームがきてしまって。ジェット風船やメガホンはほかの球団がやっているので、ベイスターズとしては新しいものをやろうとしたんです。でも新しいことって大体、ダメでした」

 チャレンジを怖れなくていい。

 2013年の「STAR☆NIGHT」の成功は、鈴木の背中を押す形となった。
 プロジェクトリーダーを任されたのが、「STAR☆NIGHT」の次のスペシャルイベント「勝祭(KASSAI)」(8月23〜25日)である。勝つ気運をつくりたい、ファンから喝采を受けたいというダブルミーニング。日本の夏祭りをテーマに置いた、チャレンジな企画だった。
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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