「DAZN Jリーグ推進委員会」月間表彰

J1月間MVP 川崎Fレアンドロ・ダミアンの変わらぬ信念、自分で決めて仲間も生かす

飯尾篤史

悠をリスペクト、アキは違い生み出せる

エースの座を争う小林悠(右)をリスペクト。レベルの高いポジション争いが川崎Fの強さを支える 【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

――フロンターレでのプレーも3年目に入りました。フロンターレのどんなところが気に入っていますか?

 クラブの環境すべてが素晴らしいと思います。クラブに関わるすべての人たちがサポートしてくれますし、来日当初から快く受け入れてくれたことに感謝しています。そうした人たちのサポートがあるからこそ、安心してピッチ内でのプレーに専念できているのかなと感じています。その感謝の気持ちを忘れずに、ピッチで戦わなければならないと思っています。

――ダミアン選手にとって、長く在籍したインテルナシオナルは心のクラブだと思いますが、その最大のライバルであるグレミオとフロンターレのチームカラーは同じ水色と黒です。移籍当初は気になりませんでしたか?

 実は、移籍が決まった頃、インテルナシオナルのサポーターからダイレクトメールで、いろんなメッセージが送られてきたんです(苦笑)。ただ、グレミオに移籍したわけではなく、日本のチームへの移籍なので、彼らも最終的にはしっかり理解してくれました。それに、確かに似ていますが、よく見れば若干違うんです(笑)。私は特に意識しませんでした。

――1年目は9ゴール、2年目は13ゴール、今季はすでに9ゴールと、右肩上がりにゴール数を伸ばしていますが、1年目はチームにフィットするのに苦しんだように見えました。どんなところが難しく、それをどう乗り越えてきたのでしょうか?

 たしかに1年目は、「辛抱強くやらなければならないな」と感じていました。チームメートの特徴を分かっていなかったし、チームメートも私のスタイルや特徴を理解していなかった。そうしたこともあってフィットに時間がかかり、出場機会も多くは得られませんでした。あの年は、ルヴァンカップしかタイトルを獲れず、私のフィットに時間がかかったことが結果に表れてしまったのかなと思います。

 リーグ優勝を狙っていたのですごく残念でしたが、一方で、自分のことを知ってもらい、チームメートのことを知るのに必要な1年だったとも思います。そのおかげで去年、今年と連係や理解はどんどん深まっていますから。

――ダミアン選手が加入する前は、小林悠選手が絶対的なエースでした。今、ふたりは同じポジションを争うライバルですが、ダミアン選手にとって小林選手はどんな存在ですか?

 悠に対してはリスペクトの気持ちでいっぱいです。私が来日したときから、いろいろと気を使ってくれて、私がどうしたら早くフィットするかサポートしてくれたんです。たしかに私と悠はポジションが同じですが、自分たちがポジション争いをするのは、タイトルを獲得するため。レベルの高いポジション争いができれば、それだけ互いに高め合うことができます。今シーズン、彼は少しケガが増えているので、一日も早く完全復活することを願っています。彼は右サイドもできますから、また一緒にプレーするのが楽しみですよ。

――家長選手についても聞かせてください。FC東京戦では彼の2ゴールをアシストし、名古屋戦では、彼のアシストからゴールを決めました。ブラジル代表経験があり、スペインでのプレー経験もあるダミアン選手には、家長選手のクオリティーはどう見えていますか?

 アキは違いを生み出せる選手ですね。それに、どんな場面でも落ち着いてプレーできるのも素晴らしいところです。おっしゃる通り、私が得点できるのはアキのサポートによるところが大きいので、その分、私も彼のゴールをサポートしたいと思っています。彼はヨーロッパのビッグクラブで活躍していてもおかしくない選手だと思いますね。

川崎Fはラ・リーガでどれくらい戦える?

今季は鬼木監督から副キャプテンに指名された。練習や試合で積極的に声を掛け、チームを鼓舞する 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

――フロンターレには田中碧選手、三笘選手、旗手選手と、五輪代表世代の選手がいます。ダミアン選手は12年ロンドン五輪に出場した経験がありますが、五輪に出場することの価値は、どんなところにありますか?

 オリンピックへの出場は、アスリートとしてすごく重要なポイントになると思います。私自身、オリンピックに出場し、得点王に輝いたことは、とても自信になっていますから。その3人はフロンターレだけでなく、今後の日本のサッカーを担っていく重要な選手だと私は思っています。これからもっともっと飛躍できるし、オリンピックに出場して世界を感じることができれば、その成長速度をさらに早めることができるんじゃないかと期待しています。

――東京五輪で日本とブラジルが対戦したら、どちらを応援しますか?

 非常に難しい質問ですね(笑)。フロンターレからオリンピックに出場する選手もいるはずですが、オリンピックに出場するブラジル代表にも友達がいるので、どちらを応援するかを決めるのは本当に難しい……(苦笑)。ただ、ブラジルは前回のリオ五輪で金メダルを獲得しているから、今回は日本に地元で優勝してもらいたい。だから、今回は日本を応援することにします(笑)。

――ダミアン選手は今季、得点やアシストだけでなく、副キャプテンとしてもチームをけん引しています。鬼木達監督から指名されたとき、どんな気持ちでしたか?

 もちろん、光栄でした。自分の役割は、まずは(谷口)彰悟のサポートだと考えています。彼をどれだけサポートできるかを意識して日頃からやっていますし、試合中もチームを鼓舞することを忘れず、走ったり、守備をしたりして、前線で自分がどれだけチームの力になれるかを常に頭に入れながら、プレーしているつもりです。

――試合中に限らず練習中も、チームメートをかなり叱咤(しった)激励するそうですね。

 もしかしたらチームメートは私のことを「うるさいな」と思っているかもしれませんね(笑)。ただ、彼らも私の性格を理解してくれているので、問題ないんじゃないかと思います。言うことでチームのためになるのなら、私は言っていきたいし、声掛けがあることで集中力が高まる側面もあります。実際、ゲーム中、練習中は私だけでなく、他の選手たちもしっかり声を出し、指示を出し、要求しているので、良い関係、良い雰囲気でやれているんじゃないかと思います。

――では、最後に。フロンターレサポーターだけじゃなく、日本のサッカーファンが気になっている質問を。ダミアン選手はベティスの一員としてスペインでのプレー経験がありますが、今のフロンターレはラ・リーガでどれくらい戦えると思いますか?

 それも難しい質問ですね(笑)。フロンターレの選手の能力やチーム力が高いのは確かですが、ラ・リーガと比べるとなると、想像なので難しいです。だからこそ、今年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)はフロンターレにとって重要になります。自分たちの実力がアジアで通用するのかどうか、クラブの価値をアジアでも証明しなければなりません。アジアを制覇することができれば、ヨーロッパのクラブと対戦するチャンスも生まれますから、まずはACL優勝を目指したいと思います。

(企画・構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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