富山・岡田侑大が史上最年少月間MVP 選手だけのミーティング直後に29得点

大島和人

史上最年少月間MVPとなった岡田侑大。3月は60%近い確率で3ポイントを決めた 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」を、今季からファン投票で選んでいる。2021年3月の受賞者は富山グラウジーズの岡田侑大選手に決まった。富山からの選出は今季3回目だ。

 岡田は拓殖大を中退してプロ入りし、2020-21シーズンがキャリアの3年目となる22歳の若武者。2018-19シーズンにはBリーグの新人王にも輝いている。189センチ・80キロのシューティングガードで、今季はシーホース三河から移籍してきた。インサイドとの連携から「ズレ」を活かすドライブ、シュートを武器とする攻撃的な選手だ。

 ドリブルを強みにする彼だが、富山は他にもハンドラータイプが多い。シーズン当初は連携面など、苦しんでいる様子も垣間見えた岡田だが、3月はあるきっかけもあり“覚醒”を果たした。3ポイントシュートを60%近い高確率で決め、10試合の平均得点も14.3得点と高水準だった。6日の千葉ジェッツ戦はキャリアハイの29得点を記録するなど、7勝を挙げた富山の好成績にも大きく貢献した。今回は史上最年少月間MVPとなった岡田に、熱く語ってもらっている。

3月に入って吹っ切れた

――月間MVPの感想をお願いします。

 僕らのチームから3人目ということで、めっちゃ嬉しい気持ちです。

――ジュリアン・マブンガ選手、ジョシュア・スミス選手に次ぐ受賞ですが、チーム内の反応はどうですか?

 取りすぎて誰も言ってくれなかったです(笑)

――今季から富山に移籍をして、チームも岡田選手も好調です。何がうまくいっている理由ですか?

 シーズンの最初の方は悩みながらプレーする試合も多かったんです。3月に入ってから吹っ切れたというか、迷いなくシュートを打ち切れています。

――悩んでいたのはどういう部分ですか?

 なるべくドリブルの数を減らしてパス&ランでというのがチームの理想で、炎さん(浜口炎ヘッドコーチ)のバスケットなんですけど、(自分は)どうしてもドリブルが多くなるタイプなので。富山には宇都(直輝)さんとジュウ(マブンガ)がいるので「自分までドリブルを突いたらチームは回るのか?」というのが自分の中で悩んでいたことです。
――キャッチ&シュートなど、違うリズムでのプレーにも慣れてきましたか?

 キャッチ&シュートは富山に来てからめちゃくちゃ練習しています。今まではピックを使って、ドリブルしてからのシュートが多かったんですけど、このチームにフィットするプレーはキャッチ&シュート。そこは重点的に練習しました。

――富山はドリブルを使うハンドラーが多いチームですが、それぞれ「ボールを触りたい」という感覚もあると思います。やはり岡田選手が自分を抑えている部分もありますか?

 炎さんからは「もっとやっていいよ」と言われています。ジュウや宇都さんからも「あれをやってはいけない」みたいな、僕を縛ることは言いません。どうしてもターンオーバーが続いていたり、ドリブルを突きすぎているなというときはコールプレーを入れたり、向こうが整理してくれる形を取れています。自分としてはいい意味であまり考えずにプレーできています。

――周りの気遣いもあって、無理なく自然に適応できているんですね。

 はい。城宝(匡史)さんや阿部(友和)さんや水戸(健史)さんには、結構アドバイスをもらっています。でも「もっと自分のやりたいようにプレーしていいんじゃないか」ということは、シーズンの中盤から言われてきて、吹っ切れてプレーできるようになってきました。
――そもそもの話ですけれど、岡田選手が移籍先に富山を選んだのはどういう理由ですか?

 個人的に速いバスケット、オフェンシブなバスケットが好きだったので、それが大きいですね。

――富山は前田悟選手、松脇圭志選手と年齢の近い選手が主力として活躍しています。同じウイングポジションですし、競争意識があるのではないですか?

 いやあ、あの二人にはないですね(笑)

――そうですか!

 敵チームになったら違うかもしれないですけど。ウイングマンなのは一緒ですが、3人ともタイプが違います。シュートに力を入れている悟さん、ディフェンスと3ポイントを武器にしている松脇という具合に、全員が違うので。特に競う感覚はないです。

――3ポイントの成功率でいうと、岡田選手と前田選手はどちらも今40%を超えていて、いい意味で競い合っている感じがあります。

 キャッチ&シュートの部分では、悟さんが明らかに僕より上なので、それはリスペクトしています。オフボールからのもらい方、フォロースルーからのファウルをもらう技術はリーグでもトップクラスです。だからそこは勉強させてもらっています。タフショット、ドリブルを突いた状況からの3ポイントは負けたくないと思ってやっています。
――キャッチ&シュートの話がありましたけれど、どんな練習メニューをやっているんですか?

 全体練習が終わったあとや、試合翌日のオフにゲームに近いスピード、動きの中で打つようにしています。シュートの本数もそうですけれど、質を高める意識で練習をやっています。他のチームに比べてスタッフは多くないので、限られた人数の中でやらなければいけません。パサーはアシスタントコーチの人がやってくれて、悟さんや松脇と一緒にやっていました。自分で打って自分で拾ってパスを出してもらって……という感じです。

――富山は外国籍選手の二人が強力ですけれど、たとえばスミスと組んでプレーするのはどういう感覚なんですか?

 ジョシュ(スミス)とやるときは、ピックというよりはボールがないところのスクリーンを最初にやろうと考えます。ドラッグスクリーンでピックを使うときは(編集部注:アーリーオフェンスで、守備陣の陣形が整うオンボールピックを掛ける)、とにかく(スミスの体が)大きいので、あまり工夫しなくても相手にぶつけられますね。ジョシュに対してディフェンスをぶつけにいくだけで、ピック&ロールが成立してしまう。簡単にズレを作れます。

――マブンガは今アシストランク1位ですが、彼のパスはどうですか?

 オープンで3ポイントを狙えるときは確実にパスをくれますね。あとジョシュが中にいるから、リバウンドを絶対取れる自信もある。「スリーを外しても2点」という感覚だから楽です。
 3月に入ってジュリアンともコミュニケーションを増やすようにしています。「自分はどこでほしい」と伝えてから、ほしいところでパスをくれます。要望したら絶対パスをくれる感じです。
 間違っていると思ったら言ってくれるし、逆に僕にこうしてほしいと思ったらそれを言ってくれる。話をしていたらすぐフィットできる感じですね。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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