角田裕毅が語る、F1でしか味わえないモノ “非日常”の速さに「驚いてほしい」
開幕戦を前に一時イギリスに“帰国”している角田裕毅は、オンライン会見で記者からの質問に応じた 【写真は共同】
その角田に、開幕直前の今、話を聞いた。
トップ3に入れたことは、自信につながった
3日間のテストのうち、特に3日目は問題なく走れて、自分の走りに集中できて、すごくスムーズな1日になりました。1日目と2日目は、新しいマシンにアダプトすることを目標に走ったんですが、1日目は燃料系の問題が出てしまい、2日目はほぼ毎スティント何らかのトラブルがありました。
とにかく3日目は何も問題なく、レースシミュレーションと予選シミュレーションを行なうことができました。その中で見えてきた課題は、風向きの変化にどう対応するかということ。バーレーンの特徴は、風が強いということです。そしてその風の向きによってマシンの動き方が全然違ってきます。向かい風のコーナーだったら、ダウンフォースが強くなるために路面にマシンが押しつけられますが、逆に追い風だとあまり空力を使えないので、すごく滑りやすくなってしまいます。ですから、コーナーによって走り方を変えなければいけませんでした。そういうところが課題だと思いました。
――総合2番手のタイムでしたが、いかがでしたか?
もちろんテストですが、トップ3になったのはうれしいですし、自信にもつながります。でも、どのチームがどのくらい燃料を積んで走っていたのか分からないですし、チームごとにやっていることも違うので、一概に調子が良いかどうかは分からないです。しかし、自分のドライビングとしてはスティントごとにタイムを上げていくことができて、自分の走りに集中することができました。その中でトップ3に入れたことは、素直に自信につながりました。
――DRS(空気抵抗低減システム)を早めに使ったという話がありますが、どういう状況だったのですか? それによって、どのくらいタイムに影響を与えたのでしょうか?
本来はテストでも、レースと同じようにアクティベーションのラインを跨(また)がないとDRSを使えないはずなんです。でも、僕の場合はなぜか開けられたんですよ。このセッションはそういう設定なのかなと思っていました……。だから、タイムを上げてやろうとか、そういう悪意はまったくなかったんです。でも、開けるなら開いた方がいいじゃないですか。しかも僕だけじゃなくて、他のドライバーも使っていると思っていました。とは言っても、50mくらい早く使っただけですし、タイムで言えばコンマ2〜3秒の違いだと思います。1秒とか、0.6〜0.7秒みたいな大きな差はないです。まぁ、DRSを早めに使ったのは変わりないですけどね。
今季のマシンは「安定しすぎている」
バーレーンで行なわれたF1プレシーズンテストで、角田は総合2番手となるタイムを記録。そのセンセーショナルな走りに、世界中から注目が集まっている 【写真:ロイター/アフロ】
――今年、角田選手が乗るアルファタウリAT02はドライブしやすそうに、ステアリングの修正がものすごく少ないように見えました。実際のところはいかがですか?
それが僕のスタイルなのかもしれません。走りやすいか走りにくいかで言えば、AT02は実は安定しすぎてしまっていて、コーナーを曲がりにくかったりします。リヤのグリップが強すぎて、フロントが曲がりにくいので、ああいう形にスムーズに曲げないと、すぐにフロントタイヤの限界を超えてしまって、滑ってしまうんです。その結果、ああいうスムーズなステアリング操作になってしまうんですね。(レッドブルのマックス・)フェルスタッペンは、ハンドルの舵角を大きく取っても、マシンがちゃんと曲がっているじゃないですか? ああいうクルマは良いんじゃないかと思いますし、ある程度不安定なクルマの方がタイムが出やすかったりもします。そういうところもありますので、まだ分からないですね。
去年のマシンはアブダビしか走らせていないので、比較は分からないですね……。ガスリーは、ブレーキングのパフォーマンスは昨年の方が良いかもとか言っていました。でもステアリングの感触は、間違いなくポジティブになっています。
――開幕戦の目標、そして今後の目標は?
開幕戦の目標は特にないです。できればポイントを獲れたらいいなというところです。F1のレースの経験がないので、どうなるのか想像ができません。とにかく今持っている全力のパフォーマンスを尽くして、最初からプッシュして、ミスを恐れずにガンガン攻めていければと思います。そしてそこでミスしたことを、それ以降に改善していきたいと思っています。
今年の目標は、できるだけポイントを獲っていきたいです。もちろんその中で表彰台だったり、優勝もしたいですけど、まずは現段階では何が起きるか分からないので……前半でミスをしたことを中盤から後半にかけてアダプトしていって、ひとつにまとめ上げていければと思っています。