田澤ルールとは何か?経緯を振り返る 日本球界が才能の流出を懸念
12年前、ドラ1位候補がMLBと契約
12年前、NPBドラフトの目玉だった田澤はNPBの指名を拒否してMLBレッドソックスと契約。この流れをきっかけに、通称「田澤ルール」が作られた 【写真:ロイター/アフロ】
10月26日、プロ野球(NPB)のドラフト会議が開かれ、今年もアマチュアのプロスペクト(有望株)たちがプロの世界に足を踏み入れる様子が注目を集めた。その中でもドラフト前から話題をさらっていたのが、メジャーリーグの名門レッドソックスのセットアッパーとして2013年のワールドシリーズ制覇に貢献した田澤純一に果たして指名があるかどうかだった。
田澤は、11シーズンにわたってアメリカでプレー。メジャー通算21勝4セーブ、89ホールド(388試合、防御率4.12)の数字を残している。今シーズンは春先にマイナー契約していたレッズを解雇され、7月から国内の独立リーグ、BC埼玉でプレーしていた。
12年前、社会人野球の強豪である新日本石油ENEOS(現在ENEOS)のエースとして都市対抗大会を優勝に導いた橋戸賞右腕は、その年のドラフトの目玉となったのだが、ドラフト指名を拒否し、レッドソックスと契約を結んだ。いわゆる「田澤問題」である。
これに対し、NPBは、ドラフトを拒否して国外プロ球団と契約をしたアマチュア選手に対し、日本球界復帰後、大卒・社会人出身の選手は2年、高卒選手は3年間、NPB球団は契約しないという12球団の申し合わせ事項、通称「田澤ルール」を設定した。これによれば、今年日本球界に復帰した34歳の田澤が、ドラフト指名を受けることができるようになるのは、36歳になる22年秋ということになっていた。しかし、NPBが8月になってこの「ルール」を撤廃したことにより、田澤は今ドラフトの対象選手となったのだ。
多くのメディアが田澤を「隠し玉」と報じたが、蓋を開けてみれば、来年35歳になるベテランを指名する球団はなかった。これについては、NPBの閉鎖性を非難するものから、田澤のこれまでの言動を考えれば当然だというものまで、さまざまな意見が飛び交った。そもそも、自国の選手を囲い込もうとする「田澤ルール」が、なにゆえに作られたのか、その妥当性は果たしてあるのか。そして「ルール」撤廃後に日本球界からアメリカ球界へのタレント流出は加速化していくのか、その3点について考察してみたい。