小林祐希が両腕に刻んだ家族の証し 「毎日サッカーができることに感謝」
後編:プロになってからの苦悩、そして移籍
母親のゆかりさん、1児の母になった2つ下の妹ゆりあさん(左)、4つ下の妹みらのさん、みんながそろった2020年春の家族写真 【写真提供:小林選手ご家族】
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苦慮する息子を見て、母親は看護師の仕事を辞めた。「自宅でも一人で考え込んでいる時間が増えて、すごいプレッシャーを感じていたみたいで。私には、食べたい時にすぐご飯を出すとか、静かな時間を過ごせるようにするとか、それぐらいしかできなかったんですけど。心の中でずっと『頑張れ、頑張れ』って祈っていました」。一方で祐希も、この思い切った行動に対して「めちゃくちゃ頑張ってくれましたね」と振り返る。
しかし、この生活は長く続かなかった。愛息は時間を無駄にしないため、クラブの練習場近くで一人暮らしを始めた。「早くに家を出た方が親のありがたみも分かるだろうし、1回離れてみようかなと」。母親は意外にもそこまでさみしさを感じなかった。近くにいたこともあって、この時は連絡を控えることもできたという。
実際のところどうだったのか、一応、祐希に確認してみた。再び爆笑された。「母親からも妹たちからも、連絡が来る頻度がめちゃくちゃ増えましたよ。『どこにいるの?』『今何してるの?』『一緒にご飯行こう』って。それまで『出てけ』って言ってたのに」
10番を背負い、気を取り直して臨んだ12年シーズン、破局はすぐに訪れた。先輩選手との関係が悪化して、7月にジュビロ磐田への移籍を決断した。「自分が生意気だったから仕方ない部分もあるけど、あの時はピッチ外のことに気持ちが向いてプレーに集中できず、サッカーが楽しめなくなっていた。もう一度サッカーを楽しみたいと思って、その時期、最初に正式なオファーをくれたジュビロに行った」
母親は磐田に旅立つ日に移籍することを知らされた。これには驚き、大きな精神的ダメージを負った。懐かしむようにほほ笑む。「さみしかったです。祐希が出て行った後、自然と涙が出てきて。それからも何度か泣いて、妹たちから心配されましたね、ママがうつ病になっちゃうんじゃないかって」
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