連載:あのJリーガーはいま

浦和レッズのレジェンドは横浜に…山田暢久は神奈川県1部で指揮を執る

栗原正夫
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イトゥアーノFC横浜で監督を務める山田暢久。浦和を離れてから現在に至るまでを聞いた 【栗原正夫】

 ピッチ脇で戦況を見つめながら、時折、身振り手振りを交えて選手へ指示を出す。深くかぶった帽子のせいか、ベンチ後方のスタンドから顔をはっきり確認することはできなかった。だが、その立ち姿は確かに見覚えがあった――。

 7月某日、かつて浦和レッズ一筋で20年間プレーした山田暢久は、神奈川県横浜市内のグラウンドにいた。浦和で出場した公式戦は延べ700試合以上。Jリーグのレジェンドのひとりである山田は現在、神奈川県社会人サッカーリーグ1部(以下、神奈川県1部)のイトゥアーノFC横浜(以下、イトゥアーノ)で指揮を執っている。

実質7部リーグで感じる苦労

 この日、イトゥアーノは午前9時20分から横浜市民大会1回戦で神奈川教員SCを相手に1-0と勝利した。だが、山田の表情は渋かった。

 イトゥアーノは2018年にそれまであったクラブを新たな運営会社が引き継ぐ形で、将来のJリーグ入りを目指して生まれ変わったばかり。山田は昨年から監督を務めているが、長くプロの第一線で活躍してきた身としては苦労も少なくないという。

「チームは基本、火・水・土曜日に練習して、日曜日が試合。1年やってみて県リーグの大変さはいろいろな部分で感じています。選手の多くは大学生で、みんなアルバイトなどをしながら。練習でベストメンバーがそろわず、チーム作りは難しいですね。練習場所を確保するのも容易ではなく、フットサル場しか使用できる施設がなかったり、場合によっては箱根まで行かないといけなかったりと移動の負担も。自分のこれまでの環境と比較するとやっぱり……。プレー面でも、僕が当たり前にやってきたことがなかなか理解してもらえず、ジレンマがないと言ったらウソですね(苦笑)」

 神奈川県1部はJ1から数えて7部相当に当たる。イトゥアーノは昨年、全10チーム中7位と低迷したが、今季の目標はリーグ2位以内に入っての関東リーグ昇格を懸けたプレーオフ進出である。

「昇格を目指す以上、目標は2位以内。簡単でないのは分かっていますが、まずは若い選手たちに『こういうサッカー(戦術)もある』と勉強のひとつとして覚えてもらえたら。どういうチームにしたいか? いまは3バックや4バック、5バックを流動的に試しながらやっていますが、言葉で説明するのは難しいですね」

今季は選手兼任のつもりだったが…

今季は選手兼任の予定だったが、ケガのため断念。選手復帰は難しいかもしれない 【写真提供:イトゥアーノFC横浜】

 現役時代は、浦和の主将として多くのタイトルを獲得した一方、飄々(ひょうひょう)とした性格で、言葉や行動でチームを引っ張るようなキャラクターとはほど遠い存在として知られていた。それだけに、監督として試合前後に作戦ボードを手にしながらミーティングに臨んでいる姿は新鮮に映った。どういう経緯で、イトゥアーノを指揮することになったのか。そもそも指導者に興味があったのか。
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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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