F1の時代を席巻した“白赤”の伝説 マクラーレン・ホンダの盛衰を振り返る
セナ・プロの関係悪化で失った「ピース」
89年日本GPでは、セナ(手前)の左前輪がプロストに接触し、プロストはリタイア。ふたりの関係悪化が、マクラーレン・ホンダの衰退の象徴のようであった 【写真は共同】
しかし、セナとプロストの関係は徐々に悪化。この年の第2戦サンマリノGPでふたりの間に決定的な亀裂が入ってしまった。セナがチーム内の不文律を破り、プロストをオーバーテイク。勝利を失ったプロストは記者会見にも出ずにサーキットを去ってしまった。
プロストはシーズン中盤のフランスGP前にフェラーリ移籍を発表。ホンダはセナを優遇していると発言していたプロストに業を煮やし、ホンダがプロストへのエンジン供給停止を通告するなど、“伝説のチーム”はバラバラになってしまった。
セナはその後も活躍し、マクラーレン・ホンダは88年から4年連続のダブルタイトルを獲得する。日本GPでは2年連続でセナ・プロが接触するなど後味の悪い展開もあったが、ふたりの熾烈(しれつ)な争いは多くのファンを惹きつけることになった。
しかし、次第に空力やシャシー開発面でライバルたちに遅れを取るようになったマクラーレン・ホンダ。92年にハイテクデバイスで武装したウイリアムズのFW14Bに完敗を喫した。ホンダもこの年で第2期F1参戦を終了し撤退。ひとつずつピースを失っていったマクラーレン・ホンダの時代が名実ともに終わった。
レッドブル・ホンダ、再び“伝説のチーム”へ
レッドブルにエンジン供給するホンダ。再びマクラーレン・ホンダのような“伝説のチーム”になれるだろうか 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】
結果として、このコラボレーションは成功しなかった。ホンダのパワーユニットは未成熟だったし、マクラーレンもシャシーの面で問題を抱えていた。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンを擁してはいたものの、成功を収めることができるような体制が整うまで待つことはできなかった。
レッドブルとトロロッソにパワーユニットを供給し、F1参戦を続けているホンダ。メルセデスという強大なライバルがF1を支配しているものの、レッドブル・ホンダに“ピース”はそろいつつあるように見える。
マックス・フェルスタッペンが現代のセナとなり、レッドブル・ホンダが“伝説のチーム”となることができるのか。そんな見方で今のF1を見てみるのも面白いのではないだろうか。