連載:闘魂60周年記念、アントニオ猪木が語る3つのターニングポイント

伝説のペールワン戦で猪木が見た光景 酷評のアリ戦が報われたパキスタン遠征

茂田浩司

今でもペールワンの歯型が残っていますよ

――「殺し合いのような試合」となった76年のアクラム・ペールワン戦のことを教えてください。猪木さんは「歓迎を受けた」とおっしゃっていましたが、現地の英雄アクラムの「憎き敵」ですよね。試合当日、大観衆はアクラムが勝つところを見に来ていました。

 リングサイドにはアクラムの弟子が500人ほど並んでいて、10万人の観客でクリケット場がびっしりと埋め尽くされていましたね。

――そんな敵地で、ルールも決まらないままリングに上がり、猪木さんがアクラムに関節技を極めても、アクラムはギブアップをしなかった。

 表情を見て「絶対にギブアップしない」と、分かりましたよ。

――ここからがすごいところですが、猪木さんはさらに関節技で絞めあげてアクラムの肩関節を外してしまい、さらにフェイスロックで絞めあげた。それでもアクラムが猪木さんの手に噛みついて抵抗してきた。

 今でも歯型が残っていますよ(と、右手を見せる)。

試合でアクラムに噛まれた傷痕は、いまだに残っているという 【撮影:菊田義久】

――おお! ここもすごいと思うんですが、無理に手を引き抜くと指を食いちぎられるから、右手を噛ませたまま、左手でアクラムの目を突いたという伝説が残っています。

 彼は絶対にギブアップはできなかったんでしょう。それは言葉も通じないし、分からないんだけど。もう一つは、体つきがそんなに筋肉隆々じゃないけど、ダブルジョイントというか、関節がものすごく柔らかくて、関節技は極めにくかった。そんな印象でしたよ。

――それでも猪木さんが関節技を極めると、アクラムはギブアップしない。それなら折るしかない、と。

 まあ「その先」にいけば、あとは「殺すか、殺される」しかないですからね。

(企画構成:有限会社ライトハウス)

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