あの人気アイドルも愛する古豪リーズ 17季ぶり1部昇格までの栄光と苦難の歴史

エルゴラッソ

CLの栄光から、破産申請まで

「エル・ロコ」の異名を持つマルセロ・ビエルサがリーズの昇格を導いた 【写真:ロイター/アフロ】

 かように広く愛されるリーズ・ユナイテッドだが、16シーズンの長きにわたってプレミアリーグから遠ざかっていた。

 日本のファンにとって記憶に新しいのは、UEFAチャンピオンズリーグ2000-01でのベスト4躍進だろう。マーク・ヴィドゥカ、ハリー・キューウェルにアラン・スミス。そして前述のファーディナンドら若手を中心に欧州の舞台を席巻。筆者と同様に、この時のリーズに魅せられたサッカーファンは多かったのではないか。デイビッド・オレアリー率いる「ヤング・リーズ」には無限の未来が広がっているかのように見えた。

 しかしながら、チャンピオンズリーグ出場が前提という皮算用により大型補強を繰り返した放漫経営のツケはたまり続け、リオ・ファーディナンド、ロビー・キーン、ジョナサン・ウッドゲートら主力を続々と放出。03-04シーズンは19位に沈み降格の憂き目に。選手は売却し続けるほかなく、栄光の可能性に満ちた若きスターたちは完全に散りぢりとなってしまった。

 クラブは立て直しを図るも財政は悪化していき、2007年には約80億円以上の負債を抱え破産申請。勝ち点はく奪のペナルティーも加わり、最下位の24位でリーグ1(3部)へとさらに降格した。その後は何とか2部への復帰を果たすが、オーナーは4度変わり、監督もコロコロと変わり続け、中位〜下位をさまよい続けるまま年月が流れた。

「エル・ロコ」の就任、そして昇格へ…

 転機となったのは、2018‐2019シーズン。その1年前、2017年5月からオーナーとなったアンドレア・ラドリッツァーニは最初のシーズンを13位で終えたが、新監督招へいの野心的なプロジェクトを敢行した。

 就任発表に『イングランドで指揮を執りたいと思っていたし、これまでも何度か機会があった。だけど正しいプロジェクトのオファーを受けることが大切だと考えていた』とあったように、リーズのオファーとプロジェクトの内容は「彼」のお眼鏡にかなったようだ。

 その彼、「エル・ロコ」は交渉の場で、昨シーズンすべての試合分析に基づいたプレゼンを行ったという。こうして、マルセロ・ビエルサがついにイングランドへと上陸を果たした。
 クラブは一定の再建を果たしたとはいえ、近年の経営規模は約60億円前後と、プレミアリーグのトップクラブとは10倍近い開きがある。昇格への切り札として超大物を獲得するような予算はない。ただ、最初のプレスカンファレンスで「私が言うことをピッチで実現できるだけの実力を持った選手たちがいると思っている」と語ったように、ビエルサは自信に満ちていた。

 彼はコーチとして、リーダーとして、教師として、施設やクラブ内を改革し、ピンポイントの補強を行い、そして地獄のトレーニングで選手を鍛え上げた。昨季13位だったチームは快進撃を続け、シーズンを通して5位以下に落ちることはなかったが、ラスト4戦を1分3敗と失速して自動昇格を逃し、プレーオフでも敗退した。スポーツマンシップに反したと相手にわざと得点させたり、ダニエル・ジェームズの移籍未遂、スパイゲート事件など、さまざまな事件出来事があったが、確実に流れの変わったシーズンだった。

 そして今季、クラブ創立100周年を最高のフィナーレで飾った。優勝した、昇格した、そしてプレミアリーグへの扉が開いたのだ。16年の時を経て、ようやくこの場所へ帰ってきた。

 現時点でビエルサの続投は確定しておらず、近々契約更新の交渉が行われる予定となっている。ただ9月以降も彼が指揮を執ることを、ウエストヨークシャーすべての人間が願っていることだろう。そしてリーズファンのみならず、世界中のフットボールファンが「プレミアのビエルサ」を一目見たいと思うはずだ。その姿はやはり、エランド・ロードのベンチにあるべきだろう。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。

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