連載:コロナ禍が高校・大学・Jクラブに与える影響

鹿島の名スカウトが明かす“獲る側”の苦労 コロナ禍での補強の影響と試される決断力

竹中玲央奈
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 Jリーグが新型コロナウイルスの感染拡大によって中断されてから約3カ月が過ぎたが、その影響を受けているのはなにもプロ選手だけではない。プロ志望の高校生や大学生は、大切なアピールの場である主要な大会が相次いで中止となったことで、進路の不安に直面しているのだ。では、そういった学生を“獲る側”は、このコロナ禍においていかなる対応を迫られているのだろうか。ここでは大迫勇也や柴崎岳らを発掘した鹿島アントラーズのスカウト、椎本邦一氏のリアルな現場の声をお届けする。
※インタビューは5月15日に実施した

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“最後の確認”ができない

残念だったのは3月のデンソーチャレンジカップの開催中止。地方大学の選手を見極める機会が失われた。写真は法政大時代にデンチャレに出場した現鹿島の上田綺世 【竹中玲央奈】

──現在、新型コロナウイルスの影響で育成年代の活動が止まっています。

 大学4年生や高校3年生はかわいそうですよね。去年から今年の頭にかけて進路が決まった選手は良いですが、最上級生となった今年、大学生で言うと前期のリーグ戦や総理大臣杯予選で最後のチェック、見極めをして、オファーするかどうかを決めたいクラブは多かったと思います。最後の確認をしたいクラブと、最後の年で伸びる可能性のあった選手にとっては不運と言うしかありません。

──大学生の場合、3月のデンソーチャレンジカップ(デンチャレ)がなくなったのは大きいと思います。地方の大学生がアピールするチャンスが失われました。

 とても大きいですね。地方の大学選抜の選手が関東選抜や全日本大学選抜を相手に活躍して、スカウトの目につき、追い始めることは多々あります。春のリーグ戦でその選手を見に行くかどうかを、デンチャレで決めるという流れなので。

──3年生である程度試合に出ていて、「間違いない」という判断をされた選手も、これから出てくる時期でしたよね。

 各クラブでも数名リストとして持っていると思います。そういった選手はおおかた大丈夫だと思いますが、やっぱり“最後の確認”をしたい選手もいます。“迷っている選手”。これがけっこう多いと思いますね。

──例えば、柏の瀬川祐輔(明治大出身)や江坂任(流通経済大出身)などは、最終学年でグッと伸びた印象がありました。彼らのような選手が出てこない可能性もあると?

 毎年そういったケースはありますよね。もともと何チームかチェックしているけど、「どうだろう」と思われている選手が、秋にグッと良くなってプロ入りを決めるということもありますから。今年は少し難しそうですよね。

──ストレートに伺いますが、鹿島の場合はどうですか?
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著者プロフィール

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。

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