連載:逆境に立ち向かう球児たち

三刀屋高がオンライン練習で見いだす活路 かつてない逆境も、一握りの可能性を信じる

沢井史

躍進を見せる島根の県立校

島根県内で躍進を遂げている三刀屋。昨春は島根大会で準優勝を果たした(写真は2020年3月のもの) 【写真提供:三刀屋高野球部】

 島根県雲南市にある三刀屋高は、県東部の山間部ののどかな場所にある。県内で唯一の普通科型総合学科を設け、活気あるカリキュラムも評判を呼ぶ県立校だ。

 野球部は昭和34年に創部され、昭和53年の第60回選手権大会に出場している。現在、部員は新2、3年生で計22名(うち女子マネージャー2名)。新1年生は現時点では18人の入部希望者がいる。4月30日に電話取材に応じた、就任4年目の國分健監督は「とてもありがたいことです」と話す。

 それだけ入部希望者が増えたのは、昨春から続く躍進が大きいだろう。2017年までは県大会で初戦敗退、もしくは1勝止まりが続いていたが、昨春の島根大会では準優勝。夏、秋もベスト8まで勝ち進んでいる。

 チームがこれだけ成長を遂げたのは「トレーナーが来てくれたことが大きい」と國分監督。17年秋から、同校OBで理学療法士の徳島靖展氏がトレーナーとしてチームに携わるようになった。シーズン終了とともに週に2度、体の部位を意識した細やかな動きをチームに浸透させ、ピラティスなども取り入れた。体の使い方を学んだ選手たちは、ひと冬越えて明らかにパフォーマンスが上がったという。

 國分監督は「野球のプレー1つ1つにつながる動きを覚えたことで、筋肉もフルに活用できるようになったし、試合での動きも変わりました。それが結果にもつながったんだと思います」と分析する。

自宅でできるトレーニング、Zoomをつないで毎日行う

Zoomを活用し、オンラインを通じたトレーニングを続けている 【写真提供:三刀屋高野球部】

 だが、世界の新型コロナウイルス感染拡大にともない、3月からは状況がガラッと変わった。島根県は3月の段階では県内に感染者が出ておらず、休校措置も取られなかったため部活動を行えたが、日を追うごとに状況は悪化し、活動時間が制限されていった。3月中旬からは2時間までの体作りのみ。4月8日に始業式があり、9日に入学式も行われたが、その1週間後に休校となった。

 そこで徳島トレーナーが始めたのがZoom(ビデオ会議アプリ)を使ったトレーニング指導だ。以前はLINE電話を使ってトレーニングを行っていた時期もあったが、Zoomは全員一斉に行えるなど利点が多く、新たな方法に切り替えた。

「自宅でもできるような可動域を広げたり体幹を鍛えるトレーニングや、ストレッチなどを毎朝40分。平日は8時40分くらいから、日曜日と祝日はもう少し早い時間になりますが、スマートフォンにインストールしたZoomでやり取りをしながら、体を動かすようにしています」

 徳島トレーナー主導で毎日行うが、各家庭でインターネット環境が異なるため、強制参加ではない。だが、2、3年生は全員が参加しており、新1年生も徐々に参加人数が増えているという。朝、同じ時間に一斉にZoomをつなぎ、トレーナーのレクチャーのもと体を動かす。國分監督は「パソコンなどで全員の動きを見ているだけです」と苦笑いするが、全員の動きを画面でしっかり確認し、取り組む表情などを細かくチェックしている。

 もともと、三刀屋高校野球部はスマートフォンをうまく活用しながら連携を深めてきた。以前からグループLINEを作り、インターネットなどで掲載されている野球にまつわるさまざまなコラムのリンクや、動画サイトから見つけた練習などを指揮官が送信。選手らもその記事を読んで刺激を受けてきた。トレーニングが終われば各自で毎日つけている野球ノートにその日のメニューなどを記し、何かあれば後日見返すことができるようにもしている。

1/2ページ

著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント