連載:逆境に立ち向かう球児たち

三刀屋高がオンライン練習で見いだす活路 かつてない逆境も、一握りの可能性を信じる

沢井史

「ブレずに甲子園で通用するチームになろう」

中々先の見通しがつかない状況だが、「何とか早く野球をやらせてあげたい気持ち」と國分監督(写真は2019年12月のもの) 【写真提供:三刀屋高野球部】

 昨年、チームは県内で進撃を続け、ひと冬を越して迎えた春だっただけに「さらに成長した姿を見ることができる春の大会がなくなったのはとても残念」と國分監督。山陰地方の冬は曇りや雨、もしくは雪の日が多く、青空の下で野球ができるちょうどこの季節の時間がとても貴重だ。ましてや3年生にとっても大事な時期である春先に野球ができない。そんなもどかしさがつのった4月下旬、3年生だけを集めてZoomでミーティングを行ったことがあった。いつ練習が再開できるのか、先が見えない時期ではあったが、それぞれの気持ちを再確認した。

「何とか早く野球をやらせてあげたい気持ちはずっと同じです。でも、ブレずに甲子園で通用するチームになろうと常に言ってきましたし、そういう意識はずっと持ちながらやれていることは分かりました」と指揮官は振り返る。

 ちなみに、今は時世を考慮して活動できていないが、普段のオフシーズンはグラウンドから出れば地元の保育園で野球教室を開催するなど、目線を下げて野球に触れあう機会も設けている。インターハイの常連である女子ソフトボール部とともに、地元の保育園や小学校のスポーツ少年団などでボール遊びなどを通じて野球の楽しさを教えている。一昨冬から行うようになった取り組みで、選手たちも野球の原点に返ることができるという。

「スポーツ少年団の高学年の子は技術がついているので、そのあたりを見ながら地元の子たちと触れ合うことになりますが、とてもいい機会です。保育園の方でもすごく喜んでいただいています。子どもの数が少なく、地元の中学校でも単独で野球チームを組めるところが減っている中、こういったこともどんどんやっていきたいですね」と、國分監督も力を込める。

 島根県は5月14日に緊急事態宣言の解除が発表されたが、予断を許さない状況が続いている。練習が再開できたとしても、夏の大会が行われるのかも未定だ。だが、一握りの可能性を信じ、今やれることをコツコツと着実に積み重ねる。42年ぶりの聖地への道を切り開くために、ブレない思いをぶつけられる“その日”を目指し、山陰の野球少年たちは日々奮闘している。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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