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浅野拓磨「登場人物のプレーに憧れた」 少年時代“マネした”サッカー作品を語る

島崎英純

浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)がオススメする映画は? 【写真:本人提供】

 自宅でゆっくり過ごすには、読書や映画鑑賞がオススメ。そこで、アスリートに人生を変えた一冊・一本、推薦したい作品を聞いた。これまでどんな本、映画と出会い、考え方や生き方の参考にしてきたのか。アスリートに影響を与えた名作に触れて、おうち時間を充実させよう。

 浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)が紹介する映画は、『少林サッカー』『A.I.』、そして『君の膵臓をたべたい』。その理由について教えてくれた。

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登場人物のセリフを覚えるほど

 僕は、あまり本を読まないのですが、映画は見ます。ちなみに僕は同じ映画を繰り返し見たりはしない方なのですが、そんな僕でも何回も見返した映画があります。

 それは子どものころにとても好きだった『少林サッカー』です。

『少林サッカー』は、登場人物のセリフを覚えてしまうほどに繰り返し見ていました。この映画が公開されたときの僕は小学生で、すでにサッカーをプレーしていましたね。子どもの頃はCG(コンピューターグラフィックス)という概念がないですから、主人公たちのプレーができるんじゃないかと思っていました。可能性はゼロじゃないと。今考えると、どうやっても可能性はゼロなんですけどね(笑)。大人になってから、この映画が良い意味でどれだけ現実離れしたものかに気づいたわけですが、子どもの頃は登場人物のプレーに憧れたし、実際にそのプレーに挑戦してみたりしていました。あえて現実的に可能かと思われるプレーを挙げると、GKが自陣のゴールから素手で投げて相手ゴールへ直接入れ込むプレーですかね。あれはできそうじゃないですか(笑)。

 この映画は見ていてシンプルに楽しいし、その舞台がサッカーだったことで自分に置き換えることができたんですよね。僕は7人兄弟の三男で、男6人に末っ子が女の子なのですが、この映画の主人公も5人の兄弟弟子たちとサッカーチームを組むので、その境遇が似ていると感じたんです。

 映画の中で最も印象深いセリフは、対戦相手の女性の2トップが空を飛びながらパス交換してゴールまで行くのですが、そこで主人公が「ワイヤーアクションかよ〜」ってつぶやいたシーンです。そのセリフはめっちゃまねしていました(笑)。

 現在、僕の兄弟でプロサッカー選手は僕を含めて2人。そして今、もうひとりがサッカー留学を目指してプレーをし続けています。末っ子以外の男6人の兄弟は全員サッカーをプレーしたことがあるので、少なからず、この『少林サッカー』に影響を受けていたのかもしれません。

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「考えさせられる」内容に感銘

 次に印象深い映画は、『A.I.』です。この映画は子役だったハーレイ・ジョエル・オスメントが主役なのですが、この主人公がAI、つまり少年型ロボットなんです。感動的な一方で、考えさせられる内容だなと感じた映画でした。

『A.I.』は僕自身のロボットに対する見方を変えさせられた映画でした。それまでのロボットは人間の仕事をヘルプするために各種作業に従事するだけの存在でしたが、この映画に出てくるロボットは人間とまったく同じ姿で、しかも感情もあるAIなんですよね。その結果、将来ロボットも人間と同じ知的生命体になるのではないかと思わされて、これまでとは異なる世界観を感じることができました。

 僕が『A.I.』を見たのは公開からしばらくたって、たしか中学生になった頃だったと思います。そのような感受性の強い時期に見たからこそ、映画の内容が衝撃的に感じられたのかもしれません。世の中のことが分かり始めたタイミングだからこそ、このような「考えさせられる映画」に感銘を受けたのでしょうね。

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見た人それぞれが異なる捉え方

 最後に僕がオススメする映画は、『君の膵臓をたべたい』(実写版)です。

 この映画は、家族や友だち、知り合いの中で話題にすると、それぞれに捉え方が異なると思いました。僕の場合は、このような映画を見ると、「やっぱり、今を大事に生きなきゃアカンな」と思うんです。そして自身の行動にも変化が生まれる。でも周囲の感想は総じて「良かったよね」で終わってしまう。

 僕は普段から「自分も明日死ぬ可能性がある」、「家族が明日死ぬかもしれない」という可能性と向き合っています。だからこそ、「今やれることをやっておかないと」と思ってしまう。その意識を内包している結果、自分の職業で言えば日々のトレーニングに打ち込んだり、頻繁に家族と連絡を取り合うという行動へとつながるんです。だからこそ僕は昔も今も、サッカーや家族に対する思いが強いのかもしれません。

 そんな僕が『君の膵臓をたべたい』を見たときはさまざまなことを考えました。この映画では主人公の女の子が病気になって余命を宣告されるんです。その結果、主人公や周りの人は自身のやりたいことを思い浮かべるわけですが、それでも彼らはまだ、余命があることに余裕を感じている。本来余命が1年と宣告されたら「短い」と思わなければならないのですが、ここで人は「まだ1年ある」と思ってしまう。この映画の結末をここで話すと、これから見る人の楽しみを奪ってしまうので控えますが、この映画で伝えたいことは、たとえ健康でも、あるいは余命を宣告されても、「どんな人でも明日には死ぬかもしれない」という現実があるということなのではないでしょうか。

 だから僕は『君の膵臓をたべたい』を悲劇的、感動的といった括りで捉えたくありません。率直に思ったのは「今、やれることをやっておかんと!」ということ。これは僕の死生観にも通じるのかもしれません。そう考えると、この映画は、今の新型コロナウイルスの流行によって起こっているさまざまな事象を考える、良いきっかけにもなるのかなと思っています。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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