憶測で不安煽るのではなく、正しい説明を コロナ禍におけるリスクマネジメント
コロナ感染の懸念について、土肥美智子医師は医療従事者の立場から説明してくれた 【いとうやまね】
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感染あることを前提に、そこから広げない
新型コロナウイルスに関わる保健所の先生とはお話ししました。1つは、自分がいるJISSの施設内で選手にもしも何かあった場合ですね。JISSはスポーツ医・科学研究機関で、中にあるクリニックは国内のトップアスリート専用の施設で、メディカルチェックや診療を行っています。ただし、コロナ(疑いを含む)の選手を受け入れる医療体制はないですし、受診もありません。
例えば、私のように職員や選手の家族が感染する場合もあります。選手自身がどこかで知らないうちに感染する可能性もゼロではありません。その時どういう対応をしていくべきか、そのあたりを保健所の先生からアドバイスいただきました。それと、私の同級生に専門家のドクターがいるので、少し情報収集として話をしています。
――万が一、JISSに感染者が出た場合ということですね?
全く起こらないわけではありません。海外遠征から戻る選手や、海外に拠点を持っている選手もいます。無症状のまま施設を利用する可能性もありえます。もちろん、熱などの症状があれば、保健所に連絡するよう指導はします。「海外に行った選手が帰ってきたらどうすればいいか」と競技団体から問い合わせもあるので、そのあたりを同級生のドクターに聞いています。それらをJISSの中で情報共有します。
――先生自身の経験も生かせます。
私もいろいろ話せますし、JISSの中にはそういった場合の責任者になっているドクターもいらっしゃり、マニュアルを作っています。例えば、入口を別にして隔離するスペースをどこに作るか。館内を利用する人は必ず入る時にアルコール消毒してもらうとか、検温してもらうとか。このあたりはインフルエンザでの対応と変わりません。どんなに注意していても感染してしまう場合もあります。感染はあるということを前提に、そこから次に広げないことが重要です。
ネット上で飛び交った感染懸念に対して
まず私自身の動きをお話します。2月23日からスリランカで行われたアジアサッカー連盟の講習会に出席していました。スリランカから帰国したのが3月2日。私が帰国した時点で、田嶋はすでにヨーロッパ出張に出かけています。その後、4日までJISSで仕事をし、5日にはアメリカ入り。同日の「2020 She Believes Cup」初戦、スペイン戦からチームドクターとして、なでしこジャパンに帯同しています。
田嶋はヨーロッパから直接アメリカに飛び、スペイン戦にだけ来場していましたが、チームとの接触はありません。試合会場での私の位置はベンチに近いところで、会長は客席の上の方から見ていました。滞在ホテルは同じですが、階も違いますし、こちらでも会っていません。基本的に、遠征時にプライベートで人と会うことはありません。なので、その時点での濃厚接触はないんです。
――ということは、2月23日から土肥先生が帰国した3月13日まで田嶋会長とは会ってないということになります。会長の帰国は3月8日でした。
そうなります。やはり家族ですので、世間の人が気にかけるのは当然で理解はしています。ただ、説明が不十分な報道を見て、なでしこジャパンだけでなくJISSに来る他のアスリートたちが心配することもあるので、広報に問い合わせがあった際には、そのあたりの説明をしていただくようお願いしてあります。サッカー協会の方も同様で、選手あるいはスタッフに感染させている可能性はないと伝えてもらっています。