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琉球・木村社長が考える「今、できる事」
“キングスvs.キングス”が1つの答え

 新型コロナウイルス感染症は人々の健康を脅かし、世界の経済活動を停滞させている。全人類が災厄と戦っている中で、無理やりエンターテインメントを強行するのは得策でない。一方で社会情勢、それぞれの立ち位置に応じて「やれることはやる」という前向きな意識も大切だ。


 琉球ゴールデンキングスの木村達郎社長はB1屈指の人気クラブを立ち上げた創業経営者で、Bリーグの理事も設立当初から務めている。競技を愛する熱とクラブの利害を越えた視野、広く発信する意思を持ち合わせた人物だ。


 今回はクラブ経営者の目線で、Bリーグと新型コロナウイルス問題の向き合いについて語ってもらった。スポーツ界全体が厳しい状況に置かれている中で、バスケットファンの皆様に木村社長が示した熟慮、説得力のある言葉をお届けしたい。(3月26日、Bリーグ中止決定前に取材)

自分たちがしっかり元気でいることが大切

Bリーグの理事も務める琉球の木村社長。クラブ経営者目線で、新型コロナウイルス問題の向き合いについて語ってもらった
Bリーグの理事も務める琉球の木村社長。クラブ経営者目線で、新型コロナウイルス問題の向き合いについて語ってもらった【スポーツナビ】

――琉球ゴールデンキングスは新型コロナウイルスの問題で、どれくらいの影響を受けていますか?


 われわれはホームゲームが9試合なくなりました。皆さんもご想像の通りで、チケット売上の多いチームは実害がより大きいと思います。会場内のグッズ販売、飲食の売上も多いので、1試合1千万円以上、トータル1億円以上の直接的な損害が出ている状況です。


――クラブによってはリーグ戦中止が発表される前に帰国する外国籍選手もいました。琉球はどのような状態でしたか?


 選手は極めて冷静です。外国籍選手に関しては日頃からコミュニケーションをきちっと取れていることもあり、すごく信頼してもらっています。全体的には冷静に、落ち着いていると思います。


――外国籍選手とのコミュニケーションを増やすなど、向き合い方を変えた部分はありましたか?


 彼らは異国に来ている選手です。今回なおさら増やしているところはありますけど、元から信頼関係を築いていることの重要性を再確認しました。僕も心配で直接話しましたが、その前に「スタッフも含めていろいろなコミュニケーションを取っているのだなあ」と安心したくらいです。


――スポンサーさんとの向き合い、反応はどうですか?


 更新のお願いをしている最中だったので、来季以降のお話をさせていただいています。経済的なマイナス影響はこれから時差を持ってくるかもしれませんが、少なくとも今の時点で「こういう時だからこそ支えたい」と皆様が言ってくださっているのはありがたいです。今どうこうという戦略戦術より、これも今までの積み重ねの大切さを再確認しています。


――経営面ではどのようなシナリオを想定していますか?


 経営者だからいろいろなシナリオは想定していますが、当面の資金繰りはもちろん問題なく、手はずは整っております。ただ先々といいますか、「来シーズン以降できるのか?」という心配はあります。そこは具体的に想定し切れないというか、極端な話をするなら試合がなかったとしてもキングスをいろいろな方に応援していただけるのか――。ファン、スポンサーも含めて、自分たちの積み上げてきたものの真価が問われると思います。


――バスケットボール界にとって今、必要なことをどうお考えですか?


 まず一緒に働いている仲間が、選手だけでなく、チームスタッフ、ビジネスサイドも含めて、健康でないといけません。外部状況が良くなっても始動できなかったら元も子もないので、自分たちがしっかり元気でいることは大切です。それを第一に挙げたいと思います。


 その上ですがBリーグ、バスケットだから世の中を元気づけていけることを、慎重になりすぎてタイミングを逃さないように実行する見極めはすごく重要になるでしょう。安全第一でありながら、世の中の全体観を持ち続けることが大切です。

――NBAでは選手がアリーナの従業員に寄付をする動きがありました。選手だけでなくその周辺で働いている仲間を守ることも大切ですね。


 選手はキャリアも長くないですし、彼ら自身のことをまず考えていいと思います。NBAとは年俸の桁が3つくらい違うので、表面的にマネしても意味がありません。ただ選手だけではプレーできないし、スタッフを思いやってくれる、一緒だなと考えてくれるのはうれしいですね。


――感染の抑制に協力し、自重しつつ、どこかで「攻める」タイミングも必要です。その見極め、合意形成についてはいかがですか?


 2つの要素があると思います。自重に関しては原理原則しか言えません。安全第一、健康第一を考えながら、刻一刻と変わる状況を見定めて判断していくことです。そうした状況を見極めながら、どう合意を取るかはすごく難しいです。選手との対話はBリーグもやっていますが、必ずしも選手だけではない。


 クラブによって立ち位置が違って、そこは少しもどかしく感じます。こういう時だからこそ、全体最適を考えないといけません。昇降格があるが故に「来シーズンこそB1に上がりたい」「B2に落ちたくない」というのは分かりますが、個別の立場論を言い始めるとキリがない。


 テクニカルな合意の手順より「こういう時は、こうしたらいい」というそれ以前の認識をそろえられなければキツいなと感じます。


――社会が困難と直面している中で、バスケットはどう貢献ができるとお考えですか?


 一言でいったら「今の自分たちにしかできない、今しかできないことをやるしかない」と思うんです。各クラブの状況によって違いますが、その時できることをやるしかない。


 そんな中で我々が結論に至ったのが3月21日の「『団結の力』プロジェクト キングスvsキングス Live配信」でした。それを公式戦と同じフルスペックでやりたかった。


 本来は(伊佐勉ヘッドコーチを筆頭にキングス出身者が多い)対サンロッカーズ渋谷との好カードで、今シーズンで一番チケットが売れていたんです。売上うんぬんより、ホームのファンが一番見たかったカードだったと思います。


 当初は3つくらいシナリオを用意していました。リーグ再開(有観客)を準備しつつ、無観客、最悪中止…と三つを考えました。刻一刻と状況が変わっていく中だったので、最低でも無観客で配信できればいいなという状況だったのが、1週間前に急転しました。


 それが火曜(3月17日)の実行委員会ですね。それ以前はもう少し楽観的に見ていたところがあって、試合がスキップされてもどこかで、無観客でもいいから再開できるだろうと考えていまいた。でもNBA中断のような外部的条件があって、「無観客でさえレギュラーシーズンが復活できないシナリオも現実的になったな」と火曜に思ったんです。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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