連載:Bリーグ特別対談

【前編】辻直人×小塚崇彦(フィギュア) 一流選手が感じる「ゾーン」とは

ダブドリ編集部

東京五輪を目指す辻選手(写真左)と先輩オリンピアンの小塚さんが、競技を超えてアスリートとして語り合った 【写真:三浦雄司】

 Bリーグの選手と他スポーツ、著名人などの対談企画がスタート。第1回は日本を代表するシューターで川崎ブレイブサンダース所属の辻直人選手と、2010年バンクーバー五輪に出場し8位入賞に輝いた小塚崇彦さんが語り合った。前編では今シーズンの辻選手について、お互いの試合前に行うルーティンなどを話してもらった。(取材日:2月6日)

今シーズンの辻選手

小塚 僕、トヨタ自動車株式会社に所属していて、自社のバスケットボールチームの応援に行ってましたね。Bリーグになって何年かたちましたが、今年初めて開幕戦を拝見しまして、雰囲気が華やかになったのがすごく印象的でした。あと、辻選手は今話をしていると優しそうな雰囲気ですが、アスリートとして活躍をしているときは目がキュッと入ってる。集中しているんだろうなあと思いました。

 ありがとうございます。

小塚 今、ご自身の調子はどうですか?

 シーズン前半は手術明けだったんです。そのせいで感覚を戻すのに必死だったんですけど、今年に入ってようやく自分らしくプレーできています。ただ、最近は試合が立て込んでいて。普段は週に2試合なんですけど、週3試合が2週続けてあったり。アウェーだったら移動もあったりで、疲労感はありますね。

小塚 オフでも、アクティブというよりは家に帰ってゆっくりする感じですか?

 そうです。ただ、オフで家にいても、シーズン中は完全にスイッチを切れるわけではないんですよね。次の対戦相手のことを考えると、どうしても緊張感が出てきます。それに今は代表合宿があって、また違った緊張感や疲労感があります。

小塚 代表として活動するときの緊張感は、普段と違った雰囲気からくるものですか?

 はい。自分のチームで戦うのとは、違う路線で戦っている感覚なので。新鮮さもあるんですけど、緊張感は増しますね。

小塚 普段から一緒にコミュニケーションをとっている仲間とは違う連携が必要だったり、もちろんコーチも違うでしょうし。

 代表候補合宿に参加している選手は仲のいい選手が多いので、そういったところではリラックスできます。でも、ヘッドコーチが違うと、求められているプレーをしないといけないですし、そこで判断されて代表に選ばれたり選ばれなかったりするので。

小塚 代表候補に入れるか入れないかっていう競争がね。

 そうなんです。代表の選考では、次の合宿に行けるメンバーは何も言われないんですけど、落とされるメンバーは合宿の最終日の練習後に別室に呼ばれるんです。

小塚 うおお、怖いですね(笑)。

 だから僕は、逃げるようにその場を出てるんです。名前を呼ばれないように。アイドルのオーディションみたいな感じなんですけど(笑)。

手術明けだった今シーズン。2020年に入り調子も上がってきた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

小塚 フィギュアスケートの大会は、1、2カ月に1回ぐらいの出場スパンなので、どちらかと言うと期間が空いている競技なんです。でもバスケは1週間の間に2試合あって、それがほぼ毎週続いていくんですよね? それをスケートに置き換えたら、すごく大変だなあと思いました。

 いやいや、スケートの大会が一週間で2回ほどすごくはないです(笑)。

小塚 前半はケガから戻ってきて、ちょっとずつ自分の体を慣らしていって……焦りなどありましたか?

 もちろんありました。自分がうまくいってないのにチームは好調で「僕の存在価値ってなんだ?」って自分で考えてしまったり、周りの評価を気にしてしまったり。

小塚 ネットで自分のことを検索したりします?

 極力しないんですけど、たまにしてしまいます。

小塚 じゃあ、辻選手がエゴサーチしてるって言っておけば、いいことばっかり書いてもらえるかも。

 それだけで気分が上がります。

小塚 ある経営者が『2割、6割、2割』って言ってたんです。肯定する人が2割、否定する人が2割。真ん中の6割は全く興味のない人。興味のない人を、いかに肯定派に持っていくかが大事だと。それを聞いてから、何か言われたとしても「2割はどうしたって否定するんだな」と考えるようにしました。

 すごい。気持ちが楽になりました。

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著者プロフィール

異例の超ロングインタビューで選手や関係者の本音に迫るバスケ本シリーズ『ダブドリ』。「バスケで『より道』しませんか?」のキャッチコピー通り、プロからストリート、選手からコレクターまでバスケに関わる全ての人がインタビュー対象。TOKYO DIMEオーナーで現役Bリーガーの岡田優介氏による人生相談『ちょっと聞いてよ岡田先生』など、コラムも多数収載。

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