簡単ではなかったFC今治JFLの航海 岡田武史、14年ぶりにJの舞台へ<前編>
J3紹介を決めたFC今治の岡田武史会長にインタビュー。JFLの戦いを振り返ってもらった 【宇都宮徹壱】
その岡田会長に、話を聞くことができたのは、J3開幕を1カ月後に控えた2月4日のこと。Jクラブの経営トップとなり、これまで以上に多忙を極める日々を送っている中、貴重なお時間をいただいた。新シーズンを迎えるにあたり、聞きたいことはたくさんあったが、その前にJFLでの昨シーズンについて振り返っていただくことにした。とりわけ知りたかったのが、岡田会長がどこまで現場にサジェスチョンを与えたか、である。
前半戦の15試合は9勝5分け1敗で折り返し、昇格の条件である4位以内はもとより「優勝して昇格」という目標も夢ではないと思われていた。ところが9月下旬から10月にかけては、3連敗を含む5試合勝利なしの大失速。4年連続の足踏みが絶対に許されない中、岡田会長は経営者としてどのような選択を迫られていたのだろうか。さっそく、ご本人に語っていただくことにしよう。
クラブのポテンシャルが感じられた愛媛との「ダービー」
シーズン中のフットボールパークの様子。えひめサッカーフェスティバルでも多くのサポーターが集まった 【宇都宮徹壱】
無料イベントだったので、正確な人数はカウントできていないんだけど、僕らの感覚では間違いなく4000人は超えていましたね。愛媛のサポーターの人もけっこう来てくれて、全体の半分くらいを占めていました。おかげでものすごくいい雰囲気になったし、こんなに来てくれるんだったら有料にしておけばよかった(笑)。
──試合後、愛媛の川井健太監督が、こんな主旨のコメントを残しています。「県内の2つのJクラブが対戦するのは意義深いし、少し以前では考えられないことだ」と。川井監督は愛媛の出身ですから、なおのことそう感じるんでしょうね。そういえば岡田さんが会長になって最初のホームゲームで、愛媛のクラブスタッフが運営のアドバイスをされたことがありましたよね。今から5年前の話ですが。
ありましたね。さすがにJ2の運営は違うなと、あの時は思いましたけれど、われわれもようやくここまで来られたのかなと。もしも愛媛と対戦する時が来たら、それは対立のダービーではなく「共生」のダービーにしたいと考えていました。要するに、一緒になって作り上げていくようなイメージですね。もちろんピッチ上では熱く戦うけれど、スタンドはわりと和やかでいろいろな交流もありましたので、今回のイベントはそのイメージに近かったのかなと。ですから僕自身も、感慨深いものはありましたね。
──今回のフェスティバルを開催してみて、クラブの会長としてあらためて確認できたことがあるとすれば何でしょうか。
これだけの集客ができるという、運営面でのポテンシャルを感じることができましたね。今回は公式戦ではないから、フットボールパークでもそんなにお店を出さなかったんだけど、フェスティバル限定のタオルがあっという間に売り切れてしまいました。そのへんは、ちょっと見込みが甘かったのかもしれない(苦笑)。サッカーに関しては、リュイス(・プラナグマ・ラモス監督)が就任して2試合目だったので、いろいろテストできたんじゃないかなと思います。
──岡田さんご自身はJクラブの会長となったことで、何かしら変化を感じることは?
totoが買えなくなったことですかね。6億円当てたら、スタジアムの資金に充てようと思っていたんだけど、その計画が頓挫(とんざ)してしまいました(笑)。