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入れ替え戦が無観客試合から中止へ
Vリーグが下した決定に広がる波紋

突然の中止に北海道・池田社長は「心が折れそう」

無観客で行われたVリーグ男子ファイナルの試合の様子
無観客で行われたVリーグ男子ファイナルの試合の様子【写真は共同】

 2月29日、高崎アリーナで開催されたVリーグ1部・男子ファイナルはジェイテクトSTINGSがパナソニックパンサーズの3連覇を阻み、初優勝を遂げた。歓喜に沸く勝者と、落胆し肩を落とす敗者――。本来ならばどちらにも温かな拍手や声援が送られたであろうスタンドには、サポーターはいない。


 史上初の無観客で開催された決勝戦から、わずか9日後の3月9日。日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ)は新たな決定を打ち出す。公式HPと公式Twitterで、V1男子ファイナルと同様に無観客で開催されるはずだった、男子チャレンジマッチの中止を発表。試合のわずか5日前のことだった。


 本来ならば大阪・日本製鉄堺体育館で14、15の両日、V1男子10位のVC長野トライデンツとV2男子2位のヴォレアス北海道が前者は残留、後者は創部3年というスピードでの初昇格を目指し、2試合を戦う予定だった。昨季V2昇格を果たし、V1昇格条件であるS1ライセンスも取得したヴォレアス北海道が2位以内を確定させ、初めて与えられた挑戦権だった。


 訪れたチャンスに向け、チームの士気も高まっていた矢先の、寝耳に水とも言うべき中止の決定に驚いたのは、両チームのサポーターだけではない。ヴォレアス北海道を運営する株式会社VOREASの池田憲士郎・代表取締役社長も例外ではなかった。


「新型コロナウイルスで被害を受けた方々も多くいる中、自分たちの要望だけを通してくれ、と言いたいわけではもちろんありません。ただ、ここまで3年間、少なからずわれわれはVリーグが掲げる理念に基づき、地域密着、事業化、エンタメ化という面において先頭を走って来た自負もありました。


 支えて下さった方々やスタッフ、選手一同の努力が、その経緯説明もないまま突然『中止です』はないでしょう、と。大げさに聞こえるかもしれませんが、僕たちは今までの頑張りを全否定された、と思ったし、正直、心が折れそうです」

緊急措置として、会場変更の案もあったが……

 無観客試合から、一転、中止へ。その選択はVリーグにとっても苦渋の選択だった、と話すのは理事を務める沖隆夫・Vリーグ機構事務局長だ。


「僕も選手出身ですので、目の前の試合がなくなるつらさは理解しているつもりです。コロナウイルスの感染拡大、26日の首相発表以降のさまざまな世間の動きを鑑みながらも、できることなら最後まで開催の手段を考えましたが、かなわなかった。『中止にした』というよりも、『中止にしてしまった』という思いは拭えません」


 28日に開催された緊急理事会の中では、その時点ですでに「チャレンジマッチは中止にしたほうがいい」という声も少なからずあった、と沖氏は言う。しかし、翌日のV1男子ファイナルを開催することや、権利を手にしたヴォレアス北海道を尊重すべく、嶋岡健治・Vリーグ機構代表理事会長が「無観客でも開催を」と進言したため、運営人数も最小限に抑えることを前提とし、中止は免れた。


 だが、但し書きも設けられていた、と沖氏は言う。


「日々変動する状況を見据え、当該チームの選手、スタッフに新型コロナウイルスの発症が確認された場合、さらには会場となる日本製鉄堺体育館での開催が難しいと判断された場合は中止し、順延は行わないと明記した。われわれの中では、その発表時点で方針は明確に示したつもりでした」


 そして開催日が近づくにつれ、事態は悪化する。


 3月2日、同月の25〜29日に日本バレーボール協会主催で川崎・とどろきアリーナでの開催が予定されていた天皇杯・皇后杯全日本選手権大会の中止が決定。さらに大阪市内のライブハウスでの感染拡大が多くのメディアで報じられたことや、小中学校の休校が実施されたことも重なり、大会運営に携わる大阪府バレーボール協会から「完全な協力は難しい」と断りが入る。並行して日本製鉄堺体育館の親企業である日本製鉄やVリーグ事務局に「このご時世にスポーツ大会を開催するのか」とクレームも相次ぎ、当初予定されていた日本製鉄堺体育館の使用が白紙となったのだ。


 緊急措置として、関西圏の会場を探し、グリーンアリーナ神戸から3月13、14日ならば開催可能と返答を受けるも、試合まで1週間を切った時点での日程変更。ましてや13日はナイトゲームで、14日は昼間に、という変則日程に対して両チームが難色を示した、と沖氏は言い、その理由をVC長野の笹川星哉・ゼネラルマネージャーはこう言う。


「VC長野の選手はそれぞれ異なる職場で働いていることもあり、選手も試合前日に集まるのがやっとという状況です。チャレンジマッチは落ちれば降格。われわれにとって非常に重要な試合であり、是が非でも負けるわけにはいかない。


 V1のトップチームが1つの試合に向けて何日もかけて調整をして臨むように、チャレンジマッチに向けて練習時間を変えるなど準備を重ねてきました。勝って残留を決めるために全員が努力をしてきましたので、勝って終わりたい。その気持ちに変わりはありませんが、試合をするために試合日を変える。しかも、わずか数日しかないのに前倒し、という決定は現実的ではありませんでした」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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