新型コロナに振り回されるバド五輪レース フクヒロもタカマツも…各々感じる苦しさ
五輪の前哨戦中の突然の発表
高橋/松友組にとって、コロナウイルスの影響で、今後の五輪レースがどうなるか重要な問題となる 【写真は共同】
国際バドミントン連盟(BWF)は13日(日本時間14日)、16日から4月12日までに予定されていた公認大会の中止および延期を発表。東京五輪の出場権獲得レースは、直近1カ月の成績を反映した4月30日付の世界ランキングによって決まる規定となっていたが、レースが終盤に中断される形となり、出場権の決定方法は、後日に見直されることとなった。
発表は、全英オープンの開催中(11〜15日)に行われた。110回目の開催を迎えた全英オープンは、まだ25回しか行われていない世界選手権よりもはるかに歴史がある。かつては世界一決定戦の意味合いを持っていたため権威があり、世界中の強豪が本気でタイトルを狙いに来ることで知られている。夏の東京五輪に向けた前哨戦と捉えることもできる、重要な位置付けだ。また、年間に3大会しか行われないBWFワールドツアースーパー1000という格付けで、五輪レースにおいて世界選手権の次に大きなランキングポイントが設定されており、おおよその出場権獲得者が決まるという意味でも注目の舞台だった。
日本A代表は、1月の交通事故後、右目の手術を行った男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(NTT東日本)を除く選手が出場。男子ダブルスの遠藤大由/渡辺勇大(日本ユニシス)と、女子ダブルスの福島由紀/廣田彩花(アメリカンベイプ岐阜)が全英オープン初優勝を飾った。
五輪レースにおいては、当初の規定と日程であれば、女子ダブルスの福島/廣田、女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)、山口茜(再春館製薬所)、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)が五輪出場権獲得を確実にしたと言える状況だった。五輪レース中断による出場権の決定方法の見直しで、どのような処置が取られるのかが分からず、言い切れない状況となったが、これらの選手が出場権を得る可能性は極めて高い。
わずかな可能性も…絶望的なタカマツ組
優勝を飾った福島/廣田組。確定とは言い切れないが、東京五輪出場を大きく手繰り寄せた 【写真:ロイター/アフロ】
最も注目されたのは、女子ダブルスだった。
五輪レースでは、世界ランク8位以内に同国勢が2組以上の場合に、1カ国最大2枠の出場権を獲得できる。また、日本バドミントン協会はすでにランク順に代表を選考することを明らかにしており、世界8位以上と日本勢2位以内が、五輪出場の条件だ。
日本勢は、世界ランク8位以内に3組がひしめいているが、19年末までに福島/廣田と、世界選手権を2連覇した松本麻佑/永原和可那(北都銀行)が抜け出し、16年リオデジャネイロ五輪の金メダリスト・高橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)が苦しい立場に立たされていた。
今大会では、福島/廣田が優勝して条件を満たし、五輪出場を確実にしている。準々決勝以降をすべてストレートで制した勝ち上がり方も、着実な進化を感じるさせるものだった。もともと、成績の安定感に定評があったが、世界選手権で3年連続準優勝など、“シルバーコレクター”の印象も強く、ビッグタイトルを取り切れないという課題を持っていたが、ついに壁を破った。廣田は「ずっと、大きい大会では2位が続いていたので、やっと超えられたなという思い」と喜びをかみ締めた。
世界ランキング1位の中国ペアを破るなど健在ぶりを示したが、準決勝で福島/廣田組に敗れて厳しい立場となった高橋/松友組 【写真は共同】
準々決勝の前日に、残りの五輪レースの中断が発表されたため、2人は五輪レースが今大会で最後になる可能性を考えていた。準決勝で福島/廣田に敗れると、2人とも目に涙を浮かべ、高橋は「昨日(準々決勝)の時点で、これが最後かもしれないという気持ちでコートに入った。今後(レース最終戦として予定されていた)アジア選手権がどうなるかも、ポイントがどうなるかも分からないですけど、ここまで2人でたくさん試合をして、良いことばかりではなかったと思います。しかし、最終的に自分たちは(リオの)オリンピックで金メダルを取って良い思いができた。今後どうなるかは分からないですが、まずはゆっくり休んで考えたい」と、レースの終幕を覚悟した様子でキャリアを振り返った。
もともとポイント差の逆転は、難しい。しかも、出場権を決める日付が変わらない場合、最短でレースが再開する日から2週間しかないため、出場を予定していた4大会を消化するのは、不可能となる。希望的観測をするのは難しい。しかし、規定変更の可能性は残されており、レースは終わらない。2人が置かれた状況の苦しさは、察するに余り有る。