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坂本勇人、主将6年目の自覚と叱咤
生え抜き二塁手の不在に「情けない」

思い返す、4年前の言葉

主将6年目を迎えた巨人・坂本勇人。今季は史上最年少2000安打の達成、遊撃手としての最多出場記録更新など、見どころがいっぱいだ
主将6年目を迎えた巨人・坂本勇人。今季は史上最年少2000安打の達成、遊撃手としての最多出場記録更新など、見どころがいっぱいだ【写真は共同】

「どうしたらもっとうまくなるだろうと自分で考えてほしい。僕は今でもずっと考えている。漠然と打った、打たれたで終わったらダメです。プロに入ってすぐ、周りにいる先輩がスーパースターばかりだったので、これはどうにかしてうまくならないとダメだと、プロじゃやっていけないと思いました。今でもずっと思っています。1球1球考えて、試して、また考えて、その繰り返しです」


 4年前の2016年春、宮崎キャンプ中に巨人・坂本勇人に車内インタビューをした時の言葉だ。二軍や三軍の若手選手について聞くと、背番号6は真剣な表情でそう言った。


 当時は高橋由伸監督の1年目でチームは過渡期、27歳だった坂本の前年の個人成績は、3年連続の打率2割台に10本台の本塁打。不本意なシーズンが続いていた。青島神社の絵馬に書かれた目標も「打率3割、20本塁打、25盗塁」と今にして思えば控え目な数字だ。

 こうして振り返ると、長い時間が経過したのだと実感する。あれから巨人は原辰徳監督が戻ってきて、21世紀の巨人をど真ん中で支えた阿部慎之助が引退して、若き4番バッター岡本和真が出現。丸佳浩という中軸の負担をワリカンできる歳の近い相棒の存在もできた。そして、20代が終わり、31歳になった坂本は19年には40本塁打を放ち、セ・リーグ遊撃手初のMVPでチーム5年ぶりの優勝に花を添えた。


 気が付けば、今季でプロ14年目。主将としても6年目のシーズンを迎える。先日、宮崎で収録されたDAZN独占インタビューを見学しながら、自軍の若手選手について語る坂本の主将としての自覚に触れるシーンがあった。


「僕がショートのレギュラーになってから、もう13年ですかね。巨人の生え抜きでセカンドのレギュラーを1年間守った人はひとりもいないので。チャンスを平等にもらえている中で、誰ひとりとしてつかみきれていないというのは、すごく情けないと思います。もっともっと誰かが、『ジャイアンツのセカンドは俺だ』という気持ちでやってくれないと困ります」

ケガをしない意識は「さらに強くなっている」

 冒頭の4年前の車中取材を思い出す。ここ数年、坂本は進化し、チームも新たなサイクルへと入った。だが、この問題だけは未だ解決できていない。そう、正二塁手の不在だ。


 昨季は若林晃弘、田中俊太、山本泰寛、増田大輝、そして吉川尚輝といった若手選手たちが次から次へと抜てきされるも、ケガや不振で継続的にチャンスをものにすることはできなかった。


 いや、若手と書いてしまったが、話題になった93年組にしても、今年27歳なので若手ではなく、もう中堅世代である。「期待の若手」でいられる時間は少ないのだ。誰が東京ドームで背番号6とともに二遊間を守るのか? どの世界でも、何の仕事でも、まずは試合に出続けなければ始まらない。カメラの前でユニホーム姿の坂本は言う。

「試合に出続けることは大変なことなので。そこへの意識、試合に出るための準備だったりケアだったり、そこだけは怠らないように。この時期はそのケガをしないための体づくりが大事なんですけど、それがまたすごく難しいですね」


 08年に19歳で全試合スタメン出場を記録した若い頃から、そうした意識はあったのだろうか?


「それはありました。あったんでね、これだけ今まで大きなケガなく、試合もたくさん出られてますし、若い時からそういう意識は常にあった。それが今はさらに強くなってますね……まあ体の変化を感じながらですけど」


 そう言って31歳のキャプテンは少しだけ笑ったのだった。衝撃デビューの十代、栄光と苦悩の二十代、全盛期の三十代。もう14年間もその背中を追い続けてきたが、今季は間違いなくキャリアのひと区切りのメモリアルイヤーになるだろう。

坂本勇人は「令和のミスター・ジャイアンツ」

十代の頃からその一挙手一投足を追っているファンにとって、坂本は「令和のミスター・ジャイアンツ」そのものである
十代の頃からその一挙手一投足を追っているファンにとって、坂本は「令和のミスター・ジャイアンツ」そのものである【写真は共同】

 残り116安打に迫った史上最年少2000安打、あと121試合で更新する遊撃手出場試合数第1位。デビュー当時は偉大な先輩と比較され、「あいつで大丈夫か」と観客から野次られていたあの背番号61の少年は、ついに長い球史でもスペシャル・ワンの存在になった。


 今年もキャンプインしたが、そこにはマシソンも上原浩治も山口俊もいない。原巨人はチームの世代交代の真っ只中だが、変わらずその中心には背番号6がいる。彼と長い時間を共有したファンは、その一挙手一投足を見るためにチケットを買い球場へ足を運ぶ。あれが俺たちのヒーローだと。少し古い言い方になるが、その存在は令和の「ミスター・ジャイアンツ」そのものだ。時代が変わっても、変わらないものがある。


 さて、球春到来。東京五輪でのペナント中断前に2000安打の快挙達成はなるのか? その試合、誰が隣で二塁を守っているのか? 原巨人のあらゆるストーリーはこの男を中心に展開されるだろう。


 過去でも未来でもない、今この瞬間「2020年の坂本勇人」をリアルタイムで見られる喜びをかみしめながら、東京ドームへ通おうと思うのだ。

中溝康隆

1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。デザイナーとして活動中の2010年10月に開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』が、累計7000万PVを記録するなど、野球ファンのみならず現役選手の間でも話題に。ほぼ日刊イトイ新聞主催『野球で遊ぼう。』プログラムに寄稿、『スポーツ報知 ズバッとG論』『Number Web』コラム連載を行うなど精力的にライター活動を続けている。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書にベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、最新作『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)などがある。

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