連載:ドライブラインの正体〜最新鋭の野球に迫る〜

バウアーが明かすドライブラインの現在地 「科学的なアプローチには終わりがない」

丹羽政善
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トレーニング談義をするトレバー・バウアー(写真左)とアレックス・ウッド(写真右) 【丹羽政善】

 前章の最後でも少し触れたが、日本で会ったときに約束した横浜DeNAの今永昇太、京山将弥とトレバー・バウアー(レッズ)の食事会が実現したのは12月13日のことだった。

 ダウンタウンの少し外れ、シアトルのシンボルともいえるスペースニードル近くの和食屋で夕食をとりながら、互いが質問をしつつ親交を深めていったが、そのときに今永がこう聞いている。

「バウアーさんは、ドライブラインの理論をすべて理解されているんですか?」

 その質問に対して少し考えてから、バウアーはこう答えている。

「現時点では、ということなら、すべて理解している。でも、終わりがない」

 どういうことか?

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「シーズン中、選手だから気づくことがある。でも、ドライブラインのアナリストらもシーズン中にさまざまなリサーチをしている。シーズンが終わってから互いに新たに感じたこと、考えたことを話し合うんだけど、常にいろんなことがアップデートされているから、終わりがないんだ」

 データはどんどん更新される。テクノロジーの進化も早い。伴って理論もアップデートされる。科学的なアプローチには、確かに終わりがない。

 ドライブラインの側がそれを可能とする一因としては、血の入れ替わりの激しさがある。ある程度の中心メンバーは固定されているが、アナリストやバイオメカニストはどんどん入れ替わり、それぞれの研究テーマが異なることから、必然、新たな発想が持ち込まれる。

 では、なぜ入れ替わりが激しいかといえば、トレーナーらが、次々に大リーグのチームにヘッドハンティングされているからである。

キャリアアップのためのステップストーンに

ヤンキースはMLBで史上初となる女性コーチを起用 【Getty Images】

 昨年11月、ヤンキースはドライブラインで働いていたレイチェル・バルコベックをマイナーの巡回打撃コーチとして起用することを発表した。大リーグの世界に女性のフルタイムコーチが誕生するのは初めてである。

 ヤンキースは昨年6月にも、ドライブラインのサム・ブリエンドをマイナーリーグの投手育成ディレクターとして引き抜いた。ブリエンドは過去3年、バウアーだけでなく、ティム・リンスカムらを担当していた。

 彼らの他にも、このオフはドライブラインのアナリストらが、ドジャース、フィリーズ、レッズに職を得ている。

 なにより昨年10月、ドライブラインの創設者であるカイル・ボディが、レッズのマイナーリーグの投手育成を統括するポジションに抜擢(ばってき)された。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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