今永昇太、日本の左腕エースへ “寛容な会社の上司”の願いを乗せて
絶望の淵にいた今永へ……恩師の言葉
「ドラフト1位でプロに行く」という夢があったから、今永は試練を乗り越えることができた 【写真:山下隼】
まだ肌寒い中、大学日本代表の選考会に参加した今永は、そこで無理をして投げ、肩を痛めてしまったのだ。
「あのときの選考会には、田中正義(創価大〜福岡ソフトバンク)、上原健太(明治大〜北海道日本ハム)、吉田侑樹(東海大〜日本ハム)、濱口遥大(神奈川大〜横浜DeNA)らがいて、みんな軽く140キロ台後半。田中正義は150キロ超。僕はブルペンで投げたら136キロぐらいしか出なくて……。そんな中、ダブルヘッダー2試合目の(タイブレークを想定しての)延長12回に投げるということで、朝8時にアップして、そこからずっと室内で軽く体を動かしながら待機していたんです。いざマウンドに行くと、ネット裏にはスカウトの方がいっぱい来ているのが見えて、ついスピードを出しにいってしまって肩をやってしまいました。本当に未熟でした」(今永)
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大学日本代表入りはなくなり、ドラフトに向けて大事な4年春のリーグ戦も投げられず。最初の試合こそベンチ入りをしたが、その後はすべてスタンドで見守ることになった。
「チームに申し訳なさしかなくて、『ただただ頑張ってくれ』『最下位にならないでくれ』って願っていました」
と同時に、普段は冷静沈着な今永が、ドラフトへの不安や焦りで押しつぶされそうになっていった。
「周りには平静を装っていましたけど、心の中は不安ばかりで。たくさんの人に注目してもらって、すごくいい形でプロに行けると思っていたのに、こんな状態で指名してくれる球団があるんだろうか、大丈夫なんだろうかってことばかり考えていました」
焦りからか、痛みは治まってきても、元のフォームに戻らない。自慢のストレートも戻ってこない。指にかかる感覚がない。秋季リーグ戦はマウンドに上がったが、前年とは明らかに違う……。
「ずっとおかしいな、おかしいなと。前年のビデオを何度も見返して、今の自分のフォームを見直して、いろんなピッチャーの動画も見て、いろいろやっていったのですが戻らなくて……。僕は良くも悪くも完ぺき主義者なので、『ダメだダメだ、もっといい球を投げなきゃダメなんだ』となって、さらにダメになっていったんです」(今永)
苦しみ続ける今永を見た西村監督が、ついにこう声をかける。
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