連載:プエルトリコ野球から学ぶヒント

MLBが支援する野球学校に潜入 日本と異なる「未来」を見据えた教育法

中島大輔
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“金の卵”を計画的に育成

昨年ロッテに在籍したケニス・バルガスが卒業したネクスト・レベル・アメリカ・アカデミーの選手たち 【撮影:龍フェルケル】

 アメリカ自治領プエルトリコの野球界は、1989年を境に大きく変質した。きっかけは、この年からMLBのドラフトに組み込まれたことだ。
 
 1988年までは町のチームで自分の好きなように腕を磨き、才能豊かな選手は16歳になったらMLBの球団とフリーエージェントで契約を結んだ。しかしドラフトを経てMLBに進むようになり、“金の卵”を計画的に育てるように変わったのである。

「ドラフトに組み込まれる以前は、現在より多くの選手がプロになっていたかもしれない。フリーエージェントだから誰でも契約することができた。でも今のプエルトリコには質の高い選手がより多くいる」

 プエルトリコ・ベースボール・アカデミー・アンド・ハイスクールの校長で、タンパベイ・レイズのスカウトも務めるヒル・マルティネスはそう話した。2002年に元メジャーリーガーのエドウィン・コレアによって設立された同校は、プエルトリコに約10校ある野球に特化したアカデミーの先駆けだ。

 同校出身のカルロス・コレアは2012年、プエルトリコ人で初めてMLBの全体1位で指名されてアストロズに入団した。レッドソックスで昨季138試合に出場した捕手のクリスチャン・バスケスや、過去2年続けて60試合以上に登板したジョー・ヒメネス(タイガース)も同校の卒業生だ。

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プエルトリコで最も豪華設備を誇るカルロス・ベルトラン・アカデミー。室内練習場では濃密なメニューが毎日行われる 【撮影:龍フェルケル】

 プエルトリコ・ベースボール・アカデミー・アンド・ハイスクールと、2011年秋に設立されたカルロス・ベルトラン・アカデミーはMLBから資金援助を受けて運営される。全国から優秀な才能をスカウトし、島内で最も才能豊かな野球少年が通っている。日本でたとえるなら、大阪桐蔭高校と横浜高校のような“横綱”という位置づけだ。

 ただし、日本の強豪私学とは決定的に異なる点がある。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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