連載:村田諒太、“世界トップ戦線”に躍り出ろ

山中慎介が村田の初防衛戦を展望 「初回からガンガンいかなくていい」

二宮寿朗

勝利はもちろん、“どう勝つか”。これが村田諒太に求められることだ 【山口裕朗】

 前戦で鮮やかにチャンピオンに返り咲いた村田諒太(帝拳)が、KO率80%の勢いあるスティーブン・バトラー(カナダ)をどう仕留めるか――。12月23日に行われるWBA世界ミドル級タイトルマッチは、村田が勝利することはもちろん、“どう勝つか”に注目が集まっている。一歩間違えれば楽勝ムードにも捉えられそうなこの一戦。元WBC世界バンタム級王者として、12度の防衛を果たし、現在は解説者を務める山中慎介さんの見解を交えながら、展望する。

村田から感じる“揺るぎない自信”

 12月23日、横浜アリーナで行なわれるWBA世界ミドル級タイトルマッチ。試合の展開を読むにあたり、村田が公式練習で語った「相手次第」という言葉は、大きなヒントになる。

 これは濁しているわけでも、余裕を持ちすぎているわけでもない。「バトラーが足を使ってきたらどうするか?」というメディアからの質問に対し、村田は顔色一つ変えることなくこう応じている。

「そうしてくれたらありがたいですね。僕としてはプレッシャーをかけて(パンチを)打つだけ。(ロブ・)ブラントとの1戦目は良くなかったけど、あのときの自分とは違うと思っているので。足を使ってくれるなら、それはそれでいい」

 相手が前に出てこようが、足を使ってこようが、やるべきことは変わらない。相手がどんな作戦でこようとも重心を低く保ち、プレッシャーをかけてパンチを打ち込むだけである。自分の展開に持ち込んでいくことができるという揺るぎない自信をにおわせた。

 帝拳ジムの先輩である元WBC世界バンタム級王者・山中慎介はこの試合をどう見ているのか。7月に行われたブラントとのリマッチに引き続き、試合のポイントを聞くことにした。

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失敗と成功。両方を経験したからこそ

「神の左」山中氏は今回の試合について、村田は「初回からガンガンいかなくていい」と語る(写真は2015年4月、8度目の防衛戦に勝利したときのもの) 【写真:アフロスポーツ】

――まず、対戦相手バトラーの印象から教えてください。

 背がすらっとしていて、リーチが長い。基本的には距離を取って、足を使ってくるタイプかなとは思います。右ストレートは威力があるし、ハンドスピードも速い。正直、いい選手だなとは感じます。ただ、戦績では8割のKO率を誇っていますけど、そんなにハードパンチャーには見えませんね。“足を使いながらうまく戦いたい”というのが、基本スタイルだと思います。

――映像は見ましたか?

 いくつかは見ました。5月の(ビタリ・)コピレンコとの試合では、効かされてダウンもありました。決して打たれ強いタイプとも言えないと思います。

――フットワークを得意とする戦いのスタイルは、ブラントとちょっと共通している感じもあります。前回のリマッチについて、山中さんはキーポイントに「初回」を挙げていました。これは0-3の判定負けに終わった昨年10月の第1戦で、初回からスピードの出力をいきなり高めてきたブラントに出鼻をくじかれたことを踏まえてのもの。今回のバトラー戦において、村田選手は「相手次第」だと語っていますが。

 それでいいと思いますね。

――と言いますと?

 ブラントとの第1戦は上体が浮いてしまって、下半身の力が上半身につながっていかなかった。でも第2戦は上体が浮くことは一度もなかった。課題を完全にクリアにできたことが非常に大きかったと思っています。第1戦の失敗と第2戦の成功、両方を持っているから、多少(試合の)入りが悪くても、バトラーの速いパンチを受けて上体が浮くことは、ほぼ考えにくい。前に出てこられても、足を使われてもそう関係ない。相手がどう来ても対応できるはず。だから、別に初回からガンガンいかなくていいと思います。

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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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