連載:村田諒太、“世界トップ戦線”に躍り出ろ

急速に高まるビッグファイトの可能性 村田諒太に求められるのは、圧倒的な勝利

杉浦大介
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村田はいま、世界トップ戦線の“どこ”に位置するか

前戦、素晴らしい戦いで王座を再奪取した村田諒太。勢いそのままにバトラー戦にも快勝したいところだ 【写真:松尾/アフロスポーツ】

「可能な限り最高の対戦相手を選ぶのは私にとって重要なこと。(海外での試合も)エキサイティングな機会だ。サウジアラビアでも、日本でも、イギリスでも構わない。日本で試合ができたら素晴らしいだろうし、モチベーションが掻き立てられるよ」

 12月7日、DAZNの番組中に、4階級制覇王者でWBAスーパー、WBC世界ミドル級タイトルも保持するサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)がそんな発言をしたことが、アメリカの業界内でも話題になった。

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 このインタビューが行われたのは、サウジアラビアで開催されたWBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級タイトル戦、アンディ・ルイス・ジュニア(アメリカ)対アンソニー・ジョシュア(イギリス)の放送中のこと。カネロの短いコメントの中で“日本”という言葉が2度も登場したのだから、単なるリップサービスなどではなかったのだろう。まもなく保持するWBA 正規王座の初防衛戦に臨む村田諒太(帝拳)にとって、今戦の意味はより深いものになったと考えることもできるのだろうか。

 12月23日、横浜アリーナで迎えるスティーブン・バトラー(カナダ)とのタイトルマッチは、村田の近未来が委ねられた一戦である。村田は7月12日にロブ・ブラント(アメリカ)との再戦を2回TKOで制し、2018年10月に一度は奪われたタイトルを取り戻したばかり。そんな状況を考えれば信じられないかもしれないが、日本のスターは“世界的なビッグファイト”まであと1勝のところにいる。

 ロンドン五輪の金メダリストという実績、好戦的なファイトスタイル、そして世界的なプロモーターである本田明彦会長率いる帝拳ジム傘下というプロフィールゆえ、世界タイトル保持者としての村田の商品価値は実は世界ミドル級でも屈指。だとすれば、カネロが興味を持ったのも驚きではないし、元統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)が日本での試合希望を口にしているのも当然のことなのである。

“ビッグファイト”は本場・アメリカから世界各地へ

 時を同じくして、昨今のボクシング界ではビッグファイトのアメリカ国外流失が本格化しそうな気配がある。もちろんアメリカがボクシングの本場という考え方は基本的に変わらず、日本が誇る“モンスター”こと井上尚弥(大橋)もトップランクと契約して米国進出を開始しようとしているのはご存じの通り。しかし、実は最近のアメリカ興行ではチケットが売れなくなって久しい。
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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