俊輔、憲剛ではなく、ヒデと僚太!?
水沼貴史が選ぶJ史上最高の名手たち
日産自動車・横浜マリノスや日本代表で活躍した水沼氏。JSL時代やJ黎明期を沸かせたテクニシャンならではの視点で解説してもらった
日産自動車・横浜マリノスや日本代表で活躍した水沼氏。JSL時代やJ黎明期を沸かせたテクニシャンならではの視点で解説してもらった【飯尾篤史】

 スポーツナビで投票を募った「Jリーグ史上最高の名手ランキング」企画。ゴールゲッター、パサー、ドリブラー、ボールハンター、ヘッダー、FKキッカーの6項目で、史上最高だと思う選手に投票してもらってきたが、最終回にご登場いただくのは、元日本代表で、日産・横浜マリノスで活躍した水沼貴史氏だ。93年のJリーグ開幕からここまで、選手、監督・コーチ、解説者としてJを見てきた水沼氏に、経験談を交えながら各項目の名手たちについて語ってもらった。

ゴンは下手だけど、迫力と執着があった

読者投票と同じく、水沼氏が選んだ1位も中山雅史(写真中央)だった。30歳を迎えても選手として進化していた姿が印象的だった
読者投票と同じく、水沼氏が選んだ1位も中山雅史(写真中央)だった。30歳を迎えても選手として進化していた姿が印象的だった【写真:アフロ】

■水沼貴史が選ぶ歴代ゴールゲッター

中山雅史(磐田、沼津など)

佐藤寿人(広島、千葉など)

興梠慎三(鹿島、浦和)

武田修宏(V川崎、市原など)

 まずはゴールゲッターから。めちゃくちゃ難しいですけど、1位はやっぱりゴン(中山雅史)。続いて佐藤寿人。あと、興梠慎三ですね。


「ヨシメーター」を見ると、大久保嘉人もすごく取ってるなって思うけど、嘉人はなんでもできる人。ゴールゲッターという枠に収まらない。ゴールゲッターはワンタッチゴーラーとか、ボックス内で勝負する人というイメージ。その典型がゴン。


 ゴンは技術的にはうまくない。はっきり言って、下手(笑)。でも、ゴール前での迫力とゴールへの執念はすごかった。あの頃のジュビロ磐田はどこからでもパスが出てきたから、ゴール前での仕事に集中できたというのもあると思うけど、右足でも、左足でも、頭でも、それこそ身体のあらゆる部分を使って、ゴールにボールを押し込んだ。今だったら、岡崎慎司も同じタイプだと思います。


 寿人もワンタッチゴールが多いですよね。ゴールを取るということに関しては天才的。あのサイズ(※身長170センチ)なのに、いろんな形でゴールを奪える。DFの背後に抜け出す形もあれば、横からのボールに合わせる形もあれば、ワンタッチで流し込む形もある。ゴール前のオールラウンダーだと思いますね。


 興梠は全体的にレベルが高い。ボールを受けて収めることができるし、ゴンや寿人とは違って自分で行けたりもする。総合力の高いゴールゲッターという印象です。


 さらに名前を挙げるなら、ウェズレイ、マルキーニョス。武田修宏も入れておこうかな(笑)。ウェズレイは特に名古屋グランパス時代にゴールを量産していたイメージが強い。


 マルキは東京ヴェルディ、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズ……Jリーグでは6、7チームでプレーしたのかな。どこに行ってもふた桁(得点を)取っているし、得点王も獲ったでしょう。マルキはうまい。パスも出せるけど、ゴールへの執着もすごく感じます。


 武田はたぶん、ラモス(瑠偉)さんがいなかったら生き残れていないと思うけど(笑)、やっぱりゴールゲッターは、味方からどうやってボールをもらうかが大事。若い頃にラモスさんから「こう動け」「ああ動け」と言われて、覚えたのは大きかったと思う。武田もいろんな形から点を取れる。何回も対戦しているけど、本当に嫌な選手でしたね。

ヒデは日本サッカーのパスの概念を変えた

パサーのボランチとして抜けた存在と水沼氏も太鼓判を押す遠藤保仁。今年8月には公式戦1000試合出場も達成。大怪我がないのも魅力だ
パサーのボランチとして抜けた存在と水沼氏も太鼓判を押す遠藤保仁。今年8月には公式戦1000試合出場も達成。大怪我がないのも魅力だ【(C)J.LEAGUE】

■水沼貴史が選ぶ歴代パサー

遠藤保仁(横浜F、G大阪など)

中田英寿(平塚)

大島僚太(川崎F)

小野伸二(浦和、札幌など)

 続いてパサー。一番はヤット(遠藤保仁)ですね。これはもう言わずもがなっていう感じ。リズムや緩急を付けられて、ほとんどミスがない。パサーのボランチとしては、抜けていると思います。


 次は迷うんだけど、ヒデ(中田英寿)。続いて大島僚太、小野伸二。番外編で上野良治かな(笑)。


 ヒデは日本のサッカーにおいて、パスの概念を変えたと思う。世界で戦うためには強いパスが必要だって言われているけど、パススピードに最初にこだわったのが、ヒデだと思います。


 小野伸二のパスが「シルキータッチ」と言われて、フワっとしたボールで受け手がトラップしやすい優しいパスなら、ヒデのパスは「俺のパスに合わせろ」と言わんばかりのスピードだった。「いやいや、もっと速く動き出してフリーになって、スペースで受けたほうが優しいでしょ」っていうパス。概念がまったく違う。それをヒデが、日本のサッカーに植え付けたと思っています。


 大島僚太も外せません。下も通せるし、上も通せる。長いボールはそんなに出さなくて、ショートからミドルのパスが多いけど、見ているところが他の選手とは違う。パサーが問われるのは、キックの技術だけじゃない。どこに出すか。アタッキングエリアに入った時に、相手の急所を突くようなパスを出せるかどうか。川崎フロンターレは相手に引いて守られる状況が多いけど、その中で大島はキラーパスを出せる。その能力が今、一番だと思いますね。


 伸二はさっきも話したとおり、観ている人に「シルキー」と表現させるくらい柔らかく、受け手のことを考えたパスを出す。それに、キックの種類が豊富。トップスピンをかけたり、ストンと落としたり、グラウンダーで滑るようなボールを蹴れる。それを両足でできるのが、伸二のすごさですね。


 良治とはマリノスで一緒にやったけど、ワンタッチでズバッと縦に入れたりするのは素晴らしかった。良治も見ているところが違った。それに、スマートそうに見えて実はスマートじゃないんですよ。


 僕がマリノスの監督だったとき、鹿島戦の前半に良治がタックルを受けたんです。で、ハーフタイムに見たら、「こんな状態でやってたの!?」って驚くくらい足首が腫れていた。でも、試合中には痛い素振りなんて見せない。そんな強さを持ちながら、スマートにパスをさばく。そういう真逆なところを持った選手でしたね。


 ちなみに、パサーとしてはもちろん中村俊輔も中村憲剛も頭に浮かんでいます。ただ、俊輔はフリーキッカーとして選びたいし、憲剛はパサーというよりも、トータル的にバランスが高く、頭の中のレベルも高いので、あえて選びませんでした。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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