俊輔、憲剛ではなく、ヒデと僚太!? 水沼貴史が選ぶJ史上最高の名手たち
田中達也はオルテガとすごく重なる
水沼氏が高校時代から注目していたという田中達也。ワンダーボーイとして愛され、エメルソンとの“エメタツ”コンビで浦和を支えた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
田中達也(浦和、新潟)
前園真聖(横浜F、V川崎など)
乾貴士(横浜FM、C大阪)
齋藤学(横浜FM、川崎F)
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達也は身体が小さいけど、帝京高時代からここまでドリブルという武器でやってきて、いまだに現役で頑張っている。
僕の中では、達也って元アルゼンチン代表のアリエル・オルテガとすごく重なるんですよね。ひとくくりに「ドリブラー」と言っても、スラロームでスーッと抜いていく選手もいれば、シザースなどのテクニックを駆使してかわす選手もいる。カクン、カクンと角度を付けながら、緩急とキレで抜いていく選手もいる。僕はそれが究極だと思っているんだけど、その代表格が達也。
ゾノもそういうタイプだと思います。それにゾノは、アトランタ五輪予選や本大会でのインパクトが強い。
乾はその2人とは違って、「カクン、カクン」ではない。ファーストタッチからスピードに乗って、スラロームとは違うかもしれないけれど、スムーズに抜いていく。いろんな選手が「乾はうまい」って言うのは、ファーストタッチが良いんですよね。そこから一気にスピードに乗っていく。
学も乾と似ていて、スピード系。一方、ちょっと面白いのは、ミキッチ。ガーッと行って、キュッと止まって、またガーッと行く。こういうタイプは日本人にはいなくて、ドリブラーというイメージとも少し違う。
ナオ(石川直宏)はストップしたところからグッと出る力強さがある。今のJリーグなら柏好文でしょうね。彼も面白い。ただ、左サイドじゃなきゃ生きないタイプ。こうしてリストを眺めていると、ドリブラーにもいろんなタイプがいることが分かりますね。
「水を運ぶ人」として日本代表でも重用
鹿島の第一期黄金時代のキャプテン、本田泰人。“すっぽんマーク”で有名だったが、「実は相当うまい」と水沼氏は技術に関しても称賛 【Photo:権藤和也/アフロスポーツ】
本田泰人(鹿島)
米本拓司(FC東京、名古屋)
稲本潤一(G大阪、川崎Fなど)
鈴木啓太(浦和)
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本田はとにかくしつこくて、対戦する僕らにとって嫌なタイプ。サントスとボランチのコンビを組んでいたから、やりやすかった面があるかもしれないけど、ボールホルダーに寄せて、離れない。逆を取ったつもりでも、そこにも付いてくる。ちょっと間を置いていて、こっちがボールを止めた瞬間にグッと足を入れてくるとか。後ろを向いてボールを受けたとき、本田が相手だと、いろいろなことを考えなきゃならない。
単純に向かってくる選手はかわせばいいんだけど、手を使ったり、足をグイグイ入れてくる選手は、すごくやりにくい。それに、本田はあまり上手じゃないと思っていたんだけど、代表のOB戦とかで何回か一緒にやってみたら、めちゃくちゃうまい。だけど、それをひけらかすようなことはせず、受けてさばくプレーに徹して、余計なことはしない。ボールハンターであり、周りを動かせるリーダーでもある。だてに黄金時代の鹿島のキャプテンじゃないですね。
ヨネはガッと奪いに行って奪い取れる選手。しかも、連続してアプローチに行けるのが強みですね。ボールを取れなくてもポジションを取り直して、すぐに潰しにいけるのはすごい。2009年のナビスコカップ決勝のようにパンチ力のあるシュートを持っているし、名古屋に移籍して技術的にもうまくなっている。ケガを繰り返してしまったのが本当に残念。
イナと啓太は似ているんだけど、イナは奪ってから出ていく推進力がある。予測がいいんでしょうね、イナは。だから、出ていくタイミングでボールが奪える。おそらく、前にスペースがあるから、ここで奪ったらチャンスになるだろう、というところまで考えてアプローチに行っていると思います。なんといってもアーセナルまで行って、チャンピオンズリーグ(CL)でデビューした選手だから。僕はハイバリーでその瞬間を見ていました。
啓太もしっかり奪えるんだけど、すごく印象に残っているのが、(ハンス・)オフトが浦和レッズの監督をしていた頃のこと。オフトは「行くな」というタイプなんですよね。だから、啓太が奪って、行けるのに預けて戻ってくる。もっと自由に行かせてあげたいな、と思った覚えがあります。
ただ、そのおかげかどうかは分からないけど、ボールハンターでもあり、バランサーとしての資質も高めていった。ガツガツ行くというより、前後左右を見てバランスを取れるボールハンター。(イビチャ・)オシムさんも「水を運ぶ人」として重宝していたけれど、周りを生かしながらやれる選手だと思っていました。
その次が今ちゃん(今野泰幸)なんだけど、ガツガツ感はこの中で一番あるかもしれない。このあたりは甲乙つけがたいという感じですね。