J1初優勝へ、チーム内で「東京愛」強まる 三田啓貴と矢島輝一が好調の一因を語る

後藤勝

スクールからU-18までFC東京で育ってきた三田(左)と矢島(右)が、チームの一体感をもたらす「FC東京愛」を語った 【浦正弘】

 スクールからU-18までFC東京で育ってきた、三田啓貴と矢島輝一の5歳差コンビによる大放談。

 ユースの若者たちが持つトップチームへの憧れ、FC東京に対するこだわり、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)初戴冠をファンとして目撃した世代の、リーグ優勝への意気込みとは。そしてアウェー8連戦を終え味の素スタジアムへと戦いの場を戻そうとする今、悲願の初優勝をかけたホームゲームラスト2への想いとは。東京愛の深さを自負するふたりが、独断と偏見で語り尽くす。

高まるサポーターとの一体感

――おふたりともFC東京ユースから大学経由でトップに入ってきた共通点がありますよね。大学に行ったとき、離れて寂しくなりましたか?

三田 どうなの?

矢島 恋しかったです、オレは。やっぱりユースと大学とでは環境が全然違うじゃないですか。

三田 そうだね。

矢島 あと、高校時代には人工芝(ユース)で練習しながら隣の天然芝(トップ)に憧れていたということもあるので「天然芝のほうでサッカーをやりたいな」と思いながら大学サッカーに取り組んでいました。

三田 東京のことは気になりましたね。試合も観ていたし。実際、たまに(スタジアムに)行ったりもしていました。

矢島 明治大は近いですもんね。

三田 うん。恋しくなってもいたと思います。正直、大学の4年間はプロの世界のようなプレッシャーは感じませんでした。遊ぶ時間もあったし。プロになってその意識は変わったと思う。

――以前から梶山陽平のようにアカデミー出身者がいたことはいたけれど、東京を好きな子どもが大きくなって東京の選手になるサイクルって、ようやく確立してきたところだと思います。『ユルネバ』もかなり身を入れて歌っているじゃないですか。『ユルネバ』どうですか?

矢島 めっちゃよくないですか。一体感を得られるし。というのも、ゴール裏に挨拶に行っているときに、スタンドから飛田給駅に向けて歩き始める人たちがいますよね。電車が混むから後半45分くらいから帰り始めるという。けれど、『ユルネバ』がひとつのイベントになってから、以前だったら試合が終わる前に帰り始めた人たちも残ってくれているし。

FC東京は今季から勝利後にサポーターとともに「ユルネバ」を歌っている 【(C)J.LEAGUE】

三田 もとはチャンピオンズリーグでリバプールの選手が試合後にやっていたやつだよな。いいよね、ああいう一体感というのは。

矢島 またがんばろうと思いますよね。

三田 あれ、誰がやろうって言い出したんだっけ?

矢島 サポーターの方と(東)慶悟くんがチームでひとつになることをやりたいと話し合って。(高萩)洋次郎くんも「優勝するチームは最後に一体感がある」と言って、そこから始まったらしいです。

三田 へぇ〜、めちゃくちゃいいじゃん。

矢島 TT兄弟(チョコレートプラネット)が来て最後に「T、TT、T、T、TT」ってやったときにすごく盛り上がったんですよ。そこからじゃないですか、最後に何かやろうという流れは。

三田 じゃあTT兄弟のおかげだ。

矢島 何かやる、というのが大事だったんでしょうね。『ユルネバ』に限らず。

――橋本拳人は眼をつむっていますね。

矢島 眼をつむっているのに「ファン・サポーターのみなさんの顔がうれしそうで楽しかったです」って言っていた。

三田 なんだあいつは(笑)。

「東京愛」もチームのひとつの軸に

チーム最古参となる森重(左)も深い東京愛を強調している 【(C)J.LEAGUE】

――ローマのトッティみたいに、ファンから選手までクラブ愛が地続きな時代が来た感じがするのですが、ふたりにとってクラブ愛、東京愛とは。最近は森重真人先輩も深い東京愛を強調していますけど。

三田 モリゲくんが?

矢島 オレはもう10年いる、っていうことですよ。

――生え抜きじゃないけれど、なんだかんだと言いながらもう10年もいる、と。

三田 オレ何年だろう……。プロで3年、その前の9年(下部組織)を足すと12年か。オレのほうが勝っている。

矢島 タマくんはめちゃくちゃ東京愛が強いですよね。帰ってきて一発目で「オレには青赤の血が流れています」って、もし自分だったら言えるか分からないですもん。

――なかなかそのセリフは出てこないですよね。

三田 うん。

矢島 熱いなー、と思って。

三田 それですね。「青赤の血が流れている(キリッ)」。

「オレには青赤の血が流れている」と三田 【(C)J.LEAGUE】

――矢島選手は他クラブに移籍はしていないけれど、気持ちは分かりますか?

矢島 移籍することが東京愛を捨てるということではないので。そこは難しいところですけれど。ユース出身で今(外に)出ていっている選手も、東京が好きで東京で優勝したいけれど、サッカー人生を考えたときに出ていく決断をしたというのもあるし。平川怜選手も(鹿児島ユナイテッドFCに移籍前の)最後の言葉で大泣きして。そういうところを見て僕たちの東京愛もまた強くなっているし。

 今年、東京で優勝したいという気持ちを発信する選手が多いですよね。今までそういうのはあまりなかったけれど、森重選手も東選手も「東京で優勝したい」「このクラブで優勝したい」と言うし、永井(謙佑)選手も「オレ、そんなに長くいないけれど、このクラブ好きだよ」っていうのもポロッと言っていたり。そういうのがチームの一体感にもつながっているから、東京愛もチームのひとつの軸になっているという気はします。

――これからどんどん「東京○○」というクラブが増えてくると思うんですけれど、そうするとますますFC東京って何? という本質が問われていくと思います。

三田 それはもう『FC東京』という名前のクラブはFC東京だけじゃないですか。ほかのクラブは名前が東京でしょ? 本物じゃない。

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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