連載:日本スポーツ界の若き至宝

「見ている景色」が違う規格外の至宝5人 世界の頂点を極めても驚きはない

吉田治良

力いっぱい太鼓判を押せる5人のアスリート

久保建英が目指すのは、世界で通用することではなく、世界一の選手だ 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 以前、サッカー雑誌の編集者をやっていた頃、ネタに困るとついつい「若手特集」に手を伸ばしがちだった。

 なぜか。

 まだ世の中に顔もプレースタイルもよく知られていない若手の特集は、「必見のヤングタレント100選」などと銘打っておけば、それだけで常に新しいスターを求める読者の好奇心と知識欲をくすぐれたから。これが一番の理由。時代が移ろい、情報があふれるネット社会になっても、そうした読者のニーズは大きく変わらなかったと思う。

 もうひとつの理由は──少し乱暴な言い方になるけれど──、結果に対して「無責任」でいられたから。探し出した原石が将来、光り輝くダイヤモンドに化ければそれはそれでうれしいが、たとえなんの値打ちもない石ころのまま終わったとしても、編集者やライターにただ見る目がなかっただけで、その責任を厳しく問われるわけではない。

 まだ十代の若者の未来予測は、それこそ海のものとも山のものともつかない話だし、それに石ころのまま終わるような選手のことなど、みんなすぐに忘れ去ってしまうものだ。
 もちろん、なかには絶対的な自信を持って、お勧めしたい若手もいる。言い方を変えれば、大成を約束された逸材中の逸材だ。

 今回取り上げた5人の日本人アスリートも、間違いなくその部類に入るだろう。競技は違えど、いずれ劣らぬ日本スポーツ界の至宝であると、力いっぱい太鼓判を押せる。

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人並外れた「進化に対する意識」の高さ

 天才とうたわれながら、いつしか消えていった過去のアスリートたちと彼らが一線を画すのは、簡単に言えば「目指す場所」「見ている景色」の違いだろう。

 スペインの名門バルセロナの下部組織で幼少期を過ごし、18歳でバルサと双璧をなすメガクラブ、レアル・マドリーに引き抜かれたサッカーの久保建英(マジョルカ)について、スポーツライターの金子達仁氏はこう話している。

「中田英寿くんにしても、小野伸二くんにしても、18歳のときに、自分が世界一の選手になれるなんて、1ミリも思ったことがないはず。当時の彼らが考えていたのは、自分がヨーロッパで通用するのかどうか。でも、久保くんにとってリーガでプレーするということは、夢でもなんでもない」

ウィンブルドン・ジュニアを制した望月慎太郎。まずはシニアの大会で結果を残したい 【写真:REX/アフロ】

 弱冠16歳のテニスプレーヤー、望月慎太郎は、今年6月の全仏オープンジュニアに初出場したとき、こんな言葉を口にしたそうだ。

「世界の一番になりたくて(この場所に)来ている。こんなところで負けていられない」

 7月のウィンブルドン・ジュニアを制した望月が目指すのは、聖地ウィンブルドンのセンターコートであり、シニアの大会でのグランドスラム制覇なのだ。
 こうしてヨーロッパの、あるいは世界のトップを見据えているからこそ、彼らの進化に対する意識の高さは人並外れていて、それが日進月歩の成長を支えているのだろう。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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