連載:日本スポーツ界の若き至宝

ヤクルト村上宗隆を多村仁志氏が絶賛 人間性を磨き、将来「侍ジャパンの4番に」

平尾類
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村上は2年目の今季、史上初の10代でのホームランキングには手が届かなかったものの、鋭いスイングからセ・リーグ3位の36本塁打を放ち、一気にスターダムに駆け上がった 【写真は共同】

 東京ヤクルトスワローズの村上宗隆は、いま日本プロ野球界でもっとも注目される若手選手だろう。目を見張るようなスイングスピードと長打力、そして打席で漂わせる大物感。高卒2年目の今季、10代の選手としては史上最多の36本塁打を記録した天性の長距離砲は、この先どんな未来を切り開いていくのだろうか。自身も現役時代にスラッガーとして鳴らした多村仁志氏が、大きな可能性を感じさせるこのヤングスターのすごさ、そしてさらなる高みを目指すうえでの課題について語ってくれた。

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三振の数はあまり気にしなくていい

 今年、大ブレークした和製大砲がヤクルトの村上宗隆だ。全143試合に出場し、打率.231、36本塁打、96打点をマーク。高卒2年目の成績としては、本塁打数が1953年の中西太氏(元西鉄ライオンズ)と並ぶ球界最多タイ記録、打点は球界の歴史を塗り替える新記録だった。

 現在の球界を代表するスラッガーの高卒2年目の成績を見ると、村上のすごさがよく分かる。

【高卒2年目の成績】
・坂本勇人(巨人) 144試合出場 打率.257、8本塁打、43打点
・筒香嘉智(DeNA) 40試合出場 打率.241、8本塁打、22打点
・鈴木誠也(広島) 36試合出場 打率.344、1本塁打、7打点
・山田哲人(ヤクルト) 26試合出場 打率.250、1本塁打、1打点

 上記の4選手は、いずれも本塁打数が2ケタに達していない。元巨人の松井秀喜氏でさえ、高卒2年目は20本塁打なのだ。村上の36本塁打は驚異的な数字と言えるだろう。

 現役時代は横浜ベイスターズや福岡ソフトバンクホークスなどでスラッガーとして鳴らし、現在は野球評論家として活躍する多村仁志氏は、「フェンスをギリギリ越える本塁打じゃなく、スタンドの中段や上段に入る打球ばかり。しかも逆方向にも本塁打が打てる。まだ19歳でしょ? 信じられない」と感心する。

 技術面に対する評価は高く、「スイングスピードが速いし、トップに入ってから体重移動するときに(上半身と下半身が)割れる角度の作り方もうまいですね。あと、ボールの下にバットを入れてスピンをかける能力が非常に高い」と解説する。

 ボールの下にバットを入れてスピンをかける打法は、打球が高く上がりやすい。長打力が得点力に直結するというデータに基づき、近年それを重視する傾向が強まっている米国球界でトレンドになっている打ち方だ。

 メジャーリーグでは今季、アメリカン・リーグとナショナル・リーグを合わせて6776本のホームランが生まれ、17年の6105本という記録が大幅に塗り替えられた。だが一方で、三振数も増え、4万2823三振はやはりこれまでで一番多かった。本塁打と三振は、いわば表裏一体なのだ。

 最近は日本でも、長打狙いのこの打法を取り入れる選手が多くなってきている。村上もそのひとり。今季はリーグワーストの184三振を喫したが、これは長打力という長所を伸ばすための代償とも言えるかもしれない。
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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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