データが実証する日本代表の「戦術の幅」 ラグビーW杯・サモア戦を振り返る
アイルランド戦とは違う戦い方を選択
終盤に戦い方を確認する日本代表。さまざまな戦術に対応している 【Photo by Yuka SHIGA】
終わってみればダブルスコアで勝利した日本代表の勝因はどこにあったのか。データ(STATS 共同通信デジタル提供)で振り返ってみたい。
日本代表のジェイミー・ジョセフHCは「スコットランド代表がサモア代表にキックを使っていて有効だと思った」と振り返ったように、この試合はキッキングゲームで勝負に挑んだ。体格の大きなサモア代表に対して、コンテスト(相手と競り合う)キックを蹴ってディフェンスから主導権を握ろうと考えたわけだ。
極力タッチキックを蹴る回数も少なくし、SO田村優やバックスリー(WTB、FBの3人)もハイパントキックを主体に、グラバーキックなども交えてトライを取りにいった。キッキングゲームで相手にプレッシャーをかけるのはこの4年間、ジェイミー・ジャパンが取り組んできた形、そのものである。
その結果、キックの回数はアイルランド代表戦の18回より9回多い27回、ボールが蹴って飛んだ距離も、577メートルから767メートルに増えている。また、この試合では自陣22メートルからハーフウェイラインの間のハイパントキックが多く、実に12回を数えた。
ディフェンスではFW陣の奮闘が光る
FLリーチとLOファンデルヴァルトのダブルタックルが決まる 【Photo by Yuka SHIGA】
この試合、日本代表は相手より20回多い、140回タックルに行き、ミスは12回で成功率は92%だった。そしてタックル回数は、アイルランド代表戦に続いてヴィンピー・ファンデルヴァルト、ジェームス・ムーアのLO陣が15回ずつで仲良くトップタイ、3位がFLリーチ マイケルで14回、4位はFLピーター・ラブスカフニが13回とFW陣の奮闘が光る。
ラブスカフニはラックに加わった回数が18回、クリーンアウト(ラックで相手を排除する)も7回でチーム3位、ボールキャリーもFWトップの6回と、この試合も攻守にわたって身体でチームを引っ張った。そのため、チーム内MVPである「ソード賞」はラブスカフニが選出された。