日本の“クイックな攻撃”が世界の脅威に 元日本代表・藤井淳がサモア戦を解説

構成:スポーツナビ

序盤は日本がストレスを感じる展開に

序盤は苦戦したが、サモア代表から4トライを奪った日本代表 【Photo by Yuka SHIGA】

 ラグビー日本代表は5日、ワールドカップ日本大会の第3戦でサモア代表を38対19で破り、3連勝を飾った。序盤は苦しみながらも、4トライでボーナスポイントも獲得した一戦について、元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。

――最終的には4トライを取って点差も開きましたが、前半は苦しい展開でした。

 前半は日本代表の反則が多すぎました。本来はテンポ良く攻めて、相手の反則を誘うことでサモアにストレスを与えたかったのですが、逆に日本がストレスを感じる展開となってしまいました。
 序盤はキックを多く使いましたが、サモアはボールを持つことが好きなので、そうした意味でも気分良くプレーさせてしまった印象があります。もちろん、キックで攻めるのが悪いわけではないのですが、体力とメンタルを削る意味ではアイルランド戦のようにボールを保持して連続攻撃をした方が良かったかもしれません。

――選手としては自分のチームの反則のストレスは大きいものですか?

 非常に大きいです(笑)。まず、相手がすぐ攻めてくる可能性があるので急いで10メートル下がらなくてはいけないですし、相手がタッチキックを選択した場合は陣地を大幅に下げられたうえに相手ボールなので精神的に疲れます。
 サモアは特にパワフルなチームなので、反則をして自陣深くに攻め込まれるのは日本代表にとって大きなストレスだったと思います。

攻守に優れている松島

藤井氏が世界トップレベルの選手と評価する松島 【Photo by Yuka SHIGA】

――その中でWTB松島幸太朗の2度のビッグゲインが光りました。

 松島選手は状況を打破できる選手で、苦しい展開でもチャンスを生み出すことができます。スピードがあって、冷静で、世界でもトップレベルの選手です。
 今日は特に、厳しい時間帯に松島選手のゲインからトライにつながったこともあって、チームに良い影響を与えました。精神的にもみんなをかなり助けたと思います。

 また、彼はアタックが目立ちますが、ディフェンスもすごく上手です。1対1のタックルはもちろん、ディフェンスの枚数が足りない時も味方に声をかけながら調整して守ることができます。サモアがライン際を攻めてくることもありましたが、松島選手が冷静に判断して周りの選手と連携して止めていました。
 今回の大会で彼のファンになった方は、ディフェンスにも注目していただけるとさらに楽しく見られるようになると思います。

スペースにボールを送る

SO田村優(右)らの素早いパスがチャンスを生み出している 【Photo by Yuka SHIGA】

――日本の4トライのうち3トライはBKで取ったものでした。

 日本代表が連続攻撃を仕掛けた際のテンポの速さは世界相手でも強みになっていて、サモアも対応し切れない場面がありました。ボールを持った選手の倒れ方や、サポートに入る選手のタイミング、SHの運動量と技術によって素早い連続攻撃が可能になります。
 アイルランド戦でも効果を発揮しましたが、日本特有の素早い連続攻撃は大きな武器になっていて、世界の脅威になっていると思います。

――グラウンドの中央よりもライン際での攻撃が効いているように見えましたが?

 サモアは中央に寄り気味で、ボールを追いかけやすい傾向があります。ビッグゲインや連続攻撃があると、さらに意識が密集周辺に集まるので、そこでタイミング良く外に展開するアタックが成功しました。

 昔のラグビーは大きく展開する時は選手が走りながらパスを受けて、相手のディフェンダーに向かって走って自分に引きつけてからパス……ということが多かったのですが、今は考え方が変わりました。BKラインは大きく展開する時は前に出ずに素早くパスすることでトライを取れそうなスペースにボールを送ることを優先しています。
 今日のCTBラファエレ(ティモシー)選手のトライやWTB福岡(堅樹)選手のトライは、彼らの前にスペースがあると選手たちが意識を共有して、そこに早くボールを回せたのが日本代表のスキルの高さだと思います。

 現代ラグビーはパスはどんどん速く、長くなっています。キックパスの精度も上がっているので、ボールを持っている選手のスキル、周囲の選手からの指示の正確性が求められます。

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