データが実証する日本代表の「戦術の幅」 ラグビーW杯・サモア戦を振り返る

斉藤健仁

松島、レメキの両WTBが活躍

力強い走りでチャンスを広げた日本代表WTBレメキ 【Photo by Yuka SHIGA】

 攻撃では、日本代表だけでなくサモア代表もハイパントキックを多用してきたこともあり、両翼のWTB松島、レメキ ロマノ ラヴァがボールを持つ回数が自然と増えて、ボールキャリー回数ではレメキが11回、松島が10回と、2人のランでリズムを作った。

 しかも松島は3度のラインブレイク、レメキは4度の相手のタックルを受けても突破するタックルブレイクを見せ、結果としてプレイヤーオブザマッチは、トライこそ挙げられなかったがレメキが選出された。

 また後半、2つ目のトライがラインアウトからのモール、最後の4本目のトライもスクラムが起点だったようにセットプレーも引き続き安定している。マイボールスクラムは4本中4本成功させて100%、ラインアウトも14本中14本成功させて100%だったことも勝因のひとつになった。

 今回の試合では、SO田村がプレースキックを9本中7本決めたことも大きかった。ただ、反則数は10と、ロシア代表戦の6、アイルランド代表戦の8から増えて二桁になってしまった。その影響で、相手にもPGを4本決められている。やはり、スコットランド代表戦でも規律は意識したいところだ。

パスでもキックでも戦える日本代表

試合後は両チームが並んで観客にお辞儀 【Photo by Yuka SHIGA】

 キックを蹴ることで、連続攻撃のボール保持のために体力を消耗することを避けて、80分間、最後まで戦うことも狙っていた。そのため日本代表選手は、終盤も疲労で動きが遅くなるというシーンは少なかった。

 なかなかデータには出にくいところだが、後半途中から出場したリザーブ選手がインパクトを残し、後半に4トライ中3トライを決めることができた。それは23人でしっかり戦っていることの証でもある。

 この試合で後半から入ったHO堀江翔太はさすがの安定感を見せた。SH田中史朗は激しいタックルでチームを盛り上げ、4本目の松島のトライをアシストした。また今年から本格的にPRに転向したPR中島イシレリ、2015年からPRとなったヴァル アサエリ愛がスクラムを押し、今大会初出場となったLOヘル ウヴェもジャッカルを1本決めた。

 ワールドカップに入る前、リーチはジェイミー・ジャパンの強みを「戦術に幅が出てきたこと」と話していたように、ボールを継続するパスラグビーでも、キッキングゲームでもしっかり戦えるチームへと成長した。また個々の選手が先発だろうが、リザーブだろうが自分の役割を理解し、しっかりと実力を発揮したことが予選プール3連勝につながったといえよう。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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