予想が裏目で「実力通り」のレースに 藤原新が考える日本マラソンに必要な備え
レース後、うつむく川内 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
陸上の世界選手権は5日(日本時間6日)に、男子マラソンが行われた。初出場の山岸宏貴(GMOアスリーツ)が、2時間16分43秒で日本勢最高の25位。4回目の出場だった川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)は、2時間17分59秒で29位。山岸と同じく初出場だった二岡康平(中電工)が2時間19分23秒で37位となり、3大会連続で入賞なしに終わった。
当初の予測とは違う展開で進んでいった男子マラソンについて、2012年ロンドン五輪マラソン代表で、現在はスズキ浜松AC男子マラソンヘッドコーチを務める藤原新氏が解説する。
暑いレースを想定し対応できなかった日本勢
ちょっと振るわず、残念だったなというのが率直な意見です。気温が約30度で湿度約50%というのは、体感していないので分からないところはあります。ただ、テレビの解説などでは「涼しく感じる」と言っていましたし、女子のように超スローペースになると思っていたところを、そこそこのペースで進められて、それに対応できなかったのかなという印象です。
多くの選手が暑い中でのタフなレースを想定して2、3カ月練習していたので、今回は逆に走りやすい気候になってしまい、(日本勢は)それに対応できなかったのかなと思います。
――レース後の取材では、川内選手が「自分は想定通り走ったんですが、作戦ミスです」と言ってました。女子マラソンや男子50キロ競歩を参考にして、超スローペースを前提とした作戦を立てたことに対してはどう感じますか?
自分の走りは想定通りだったかもしれませんが、レース展開が想定外だったというところですよね。想定内とも言えるし、想定外だったとも言えたのではないでしょうか。 ただヤマを張って、それが外れたのならある意味仕方ないのかなとも思います。だけどもやはり、アフリカ勢はスローペースと言ってもそれなりに速いですよ。
言うのは非常に簡単なのですが、結局のところ、自分の走りに徹することも大切ですし、相手に合わせて戦術を変えることも大切なんです。
――上位選手の顔ぶれを見ると、今季の記録で上位に名を連ねる、力のある選手が順当に並んだという印象です。
やはり、暑さ対策をしっかりするということも大事ですが、結局のところ、地力のある選手が勝ってしまうのがほとんどの場合です。そのあたりは、なかなか考えさせられるところがありました。暑さに対して調整していくということは、ある程度スピードや練習の質を犠牲にするところもあります。
――今回の世界選手権では、参加した3人とも目標を入賞に設定していました。それを前提に作戦を組み立てていたと思うのですが、これが仮に当初からメダルを狙っていれば結果は変わった可能性はあったのでしょうか?
今回のレース展開については、ふたを開けてみなければ分からない部分もありましたが、(上位は)ある程度の集団にいたので、入賞狙いであったとしても集団の中で行くしかなかったのかなと思いますね。男子は女子に比べて、層が厚いというか、粒ぞろいな(選手が出場していた)印象があったので、メダル狙いも入賞狙いも、これだけタイムを持っている選手が多いと一緒に行かないとダメなのかなと感じました。