川内優輝が目指すは“4度目の正直”
知識と経験を糧に、世陸で悲願の入賞を
悲願の入賞に向け、入念な対策で号砲を待つ
悲願の入賞に向け、入念な対策で号砲を待つ【写真は共同】

 前回は、わずか3秒差で逃した悲願を果たすために――。川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)は、万全の準備で98回目のフルマラソンに挑む。


 陸上の世界選手権(カタール・ドーハ)は大会9日目の現地時間5日(日本時間6日午前5時59分)に、男子マラソンが行われる。日本勢は川内、二岡康平(中電工)、山岸宏貴(GMOアスリーツ)の3人が出場。2大会連続4回目の出場となる川内は、3日の記者会見で前回惜しくも届かなかった8位入賞を目指すと意気込んだ。

スタート時間、天候への入念な対策

 届かなかったものは、もう一度自分で取り返しにいく。川内は、力強くそう宣言した。


「(前回2017年大会の)ロンドンでの世界陸上では、(8位と)3秒差で9位という結果でした。その時に男子・女子の(10大会連続)入賞記録を途絶えさせてしまったので、自分自身で取り戻すという気持ちで入賞以上を狙っていきたいと思います」


 現地深夜23時59分にスタート、しかも大会初日に行われた女子マラソンの時には気温32度、湿度74%を記録したように、今回も悪条件下でのレースが予想される。それでも、川内の準備は十二分に万全だ。


 まず、夜中のスタート時間に体を慣らすために、完全な「昼夜逆転生活」を実践中だ。「(1日に)ドーハに入ってからは毎日夜の7時くらいに起きて、1時から3時くらいまで練習。そこからご飯を食べて、お昼の11時くらいに寝ています」。レースの時間と活動スケジュールを、日数をかけて合わせていくことで、体を順応させている。


 次に、暑さの対策については「競歩の映像を見ながら、どういう対策をしているか参考にさせてもらいましたので、似たような対策をとっていくと思います」と語った。今大会の競歩勢は、男子50キロで鈴木雄介(富士通)が金メダルを獲得。女子20キロでも岡田久美子(ビックカメラ)、藤井菜々子(エディオン)がダブル入賞を果たすなど結果を残している。その競歩勢は給水所ごとに氷の入った袋を受け取り、頭や手を冷やすなど、科学委員会がサポートする対策を準備し成果を得てきた。そうした“財産”を、川内も素直に使わせてもらうつもりだ。


 もともと暑さは苦手としているが、6月には先立ってドーハに足を運び、実際に現地を下見した。さらに、「苦手としているうえで、いろいろと準備してきました。ロンドン大会の前には、春の沖縄と冬の(東京都)荒川を両方走って、自分の汗が暑い時と寒い時でどう変化するかということも比べていた。その知識も生かしていきたい」とも話す。これまでのレースと練習で得た膨大な蓄積を、この大舞台で生かしていく。

「フルマラソンが98回目の選手はいない」

前回の世界陸上ロンドン大会で惜しくも入賞を逃し、頭を抱える川内。“4度目の正直”となる今回はその悔しさを晴らせるか
前回の世界陸上ロンドン大会で惜しくも入賞を逃し、頭を抱える川内。“4度目の正直”となる今回はその悔しさを晴らせるか【Getty Images】

 誰にも負けない自信もある。これまで挑戦してきたフルマラソンは、実に97回。「百戦錬磨」という四字熟語があるが、32歳はまもなく文字通りその境地へ達することになるだろう。川内も「(自分の強みは)経験だと思います。他に今回でフルマラソンが98回目という選手はいないと思うので」と話す。それだけのレースに挑み、そしてほとんどのレースで完走してきたという事実こそ、今回のように予測不能なレースでは最大の武器となる。


 有力選手にマークをしぼり、その選手の動向を見ながら展開していくのがいつものパターンだが、ドーハではその作戦は用いないという。


「(同じレースで)走った選手が大勢いたので、最初はいつも安定して走る(ダニエル・)メウッチ選手(イタリア)をマークしようかと考えていました。しかし、女子の方でイタリア勢が暑さに強いと考えていたのに全員棄権したのを見て、『うーん、どうなのかな』という部分が出てきました。最終的には、周りを見ながら走るしかないのかな、と思います」


 レース当日はここ数日よりも気温が下がる可能性もあり、そうなると前半から飛ばす選手が出てくることも考えられる。だからこそあえて注目選手をしぼらないことによって、どんな展開になっても対応できる準備をしておくことが大事になる。


 9月17日に東京で壮行会が行われた時には、出場しなかったMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の話題になり「(13日に栃木県の)日光で走っている時に『あさって(MGC当日)頑張ってください』と声をかけられました(笑)。4年後もあるとしたら、五輪に関係なく走ってみたいですね」と楽しそうに話していた。だが、五輪であろうと世界選手権であろうと、日の丸を背負って戦うことの意味は変わらない。


「6月に(ドーハへ)下見へ行った時に覚悟が決まりました。日本代表で走るからには、自分自身のためにも、日本のためにも8位入賞という目標を達成したいと思います」


 自分自身と日本のために戦う98回目のフルマラソンが、もうすぐ始まる。


(取材・文:守田力/スポーツナビ)

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