日本の優位性を確認したライバル対決 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(9月30日)
ライバルたちへの個人的な思い入れ
スタジアムに向かう地下鉄で出会ったスコットランドのサポーター。気さくに撮影に応じてくれた 【宇都宮徹壱】
無論そうなるためには、日本は予選プールの残り2試合でも勝利を積み重ねる必要がある。10月5日に豊田でサモア戦、そして13日に横浜でスコットランド戦。そのライバルたちが、この日、神戸市御崎公園球技場で対戦する。両チームとも第1戦を終えて、ロシアに大勝したサモアは5ポイントの3位、アイルランドとの初戦を落としたスコットランドは0ポイントの4位。ただし、スコットランドが初戦から中7日なのに対し、サモアは中5日と日程的にはやや不利な状況である。
さてサモアとスコットランドといえば、単にプールAのライバルという以上に、個人的にも思い入れがある。サモアについては2週間ほど前、福島県いわき市での事前合宿を取材したばかり。地元のラグビー少年・少女たちとの交流会では、親身な技術指導と細やかなファンサービスぶりに多くの参加者が感銘を受けていた。「マヌ(野獣)サモア」というニックネームが示すとおり、勇猛果敢なプレーぶりで知られる彼らだが、ピッチの外では茶目っ気たっぷりなジェントルマン。そのギャップが実に魅力的であった。
一方のスコットランドは、伝統的なタータンチェックに身を包んだサポーターでおなじみ。民族の伝統を大切にしながらも、ビールを大量にあおりながら歌い踊る彼らの姿は、W杯の風物詩にもなっている。残念ながらサッカーの国際大会に出場したのは、1998年のW杯フランス大会が最後。それだけに、21年後に日本で開催されたラグビーW杯でタータン軍団と再会できるのは、実にうれしい限りである。この日は「偵察」の意味合いが強いものの、思い入れのある両チームの対戦だけに、ぜひともいい試合を見せてほしいものだ。
目新しいルールとスコットランドの強さ
地元ファンと記念撮影をするサモアのサポーター。国旗に描かれた星は、祖国の空に輝く南十字星 【宇都宮徹壱】
もうひとつ「おや?」と思うことがあった。試合開始早々、サモアのナンバーエイト、ジャック・ラムが負傷でピッチを離れて20番の選手が入る。ところが前半12分になってラムがピッチに戻り、20番は再びベンチに下がってしまった。どういうことだろうと思って、ルールブックの交代の項目を確認。なんと、ラグビーでは「治療のための一時交代」というものが認められていて、15分以内であれば戦列に復帰できるそうだ。これなどは接触プレーが多い、ラグビーならではのルールと言えるだろう。
さて、試合である。前半8分、グレイグ・レイドローのペナルティーゴールで、いきなりスコットランドが先制。その後はこう着した時間が続くも、29分に意表を突くキックから、さらに初トライを決める。ここでコンバージョンを任されたのは、10番のスタンドオフではなく、9番(スクラムハーフ)のレイドロー。冷静にポールに通して10−0とすると、レイドローは35分にも自らスクラムとゴールを決め、ひとりで12点をたたき出した。さらに38分には、フルバックからのドロップゴールも決まり、スコットランドは20−0という大差で前半を終える。
その後もスコットランドの優勢が続くが、またしても初めて目にする事案が発生。後半16分、スコットランドのトライの有無をめぐってTMO(ビデオ判定)となり、コンバージョンなしで7点が追加された。これは「ペナルティートライ」というルールで、「ディフェンス側の故意の反則がなければトライが決まっていた」とレフェリーが認めた場合、コンバージョンを省略して7点が入る。スコットランドは後半34分にも、ペナルティートライが認められて7点を追加。そして2つの故意の反則により、サモアのエド・フィドウがレッドカードで退場となる。試合は34−0で、スコットランドが完勝した。