日本の優位性を確認したライバル対決 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(9月30日)

宇都宮徹壱

あらためて確認された日本の優位性

試合後もスタジアムの屋根は閉じられたまま。充満した熱気と湿度に選手たちは苦しめられた 【宇都宮徹壱】

 終わってみれば、ティア1とティア2の力の差を見せつけられる試合内容だった。スコットランドは(こういう表現が適切なのかはさておき)今大会初となるゼロ封。しかも4トライを決めて勝ち点は5ポイントとなり、得失点差でサモアを抜いてプール3位となった。アイルランドは2戦目で日本に敗れているが、7点差以内のボーナスを加えて6ポイントの2位。首位の日本は9ポイントである。これで5チームすべてが2試合を終え、連勝しているのは日本のみだが、ポイント数だけを見ればいささか心もとない。

 もっとも、この日の試合を見る限り、日本の優位性をあらためて確認できたのも事実である。まずサモア。レッドカードを受けたウイングのフィドウは、次の日本戦では出場停止となる。それに加えて、センターのレイ・リーローとフッカーのモトゥ・マトゥウも、先のロシア戦での「危険なタックル」を理由に3試合の出場停止処分。主力3選手が使えない上に、無得点でスコットランドに敗れた心理的ダメージも深刻だ。今のサモアが相手なら、十分に日本に勝機があると考えるのが自然であろう。

 では、スコットランドについてはどうか。グレガー・タウンゼントHCは、結果には一定の満足を示しつつ、こんな発言もしている。いわく「われわれは次のロシア戦に勝利して(なおかつ)ボーナスポイントを得なければならない。そのあとには日本戦が控えているので、この2試合について同時に準備していく必要がある」。すでに2敗を喫しているロシアだが、油断ならない相手であることに変わりはない。それが終われば、中3日での日本戦。いくら選手層が厚くても、この日程では明らかに不利だ。逆に中7日の日本は、十分にコンディションを整えて予選プール最終戦を迎えることができよう。

 そんなわけで、あらためて日本の優位性を確認できた今回の試合。一方で不可解に感じられたのが、雨天でもないのにスタジアムの屋根が閉じられていたことだ。結果として両チームの選手は、蒸し暑さに苦しみながらのプレーを強いられた(「汗で手が滑ってボールが収まりにくかった」という選手のコメントも複数聞いている)。まさか日本のライバルたちの消耗を狙ったわけでもあるまい。残り2試合を開催する神戸会場には、くれぐれもプレーヤーズファーストの試合運営をお願いしたいところだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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