札幌にイングランドがやって来た! サッカー脳で愉しむラグビーW杯(9月22日)

宇都宮徹壱

大会初のドーム開催は成功だったのか?

トンガから来たファンにも会えた。健闘はしたものの、イングランドとの実力差は明らかであった 【宇都宮徹壱】

 キックオフは19時15分。試合前、赤いジャージのトンガの選手たちが、ウォークライ(戦いの雄叫び)を披露する。ウォークライとは、ポリネシア系の舞踏で、最も有名なのがニュージーランドの「ハカ」。それ以外にもサモアの「シヴァタウ」、フィジーの「シビ」、そしてトンガでは「シピタウ」と呼ばれ、その様式はさまざまである。トンガのシピタウは、ハカのような派手さはないものの、空手の型に似た所作が実に美しい。なかなかに、よいものを見せてもらった。

 試合はイングランドとトンガが、それぞれペナルティーゴールを決めて3-3の状態が続くも、その後はイングランドが2トライを決めて前半は18-3で終了。この間、4回のTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)と呼ばれるビデオ判定があった。このうち3回はトライか否かの判定で、2つがノートライ。興味深かったのが、サッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)とは異なり、リプレー映像が何度も会場の大型モニターに流れたことだ。そのたびにスタンドが盛り上がり、ある種の演出効果を狙っているようにも感じられる。

 後半早々、イングランドはペナルティーゴールでさらに3点を追加、トンガもフィジカルを前面に押し出して対抗する。その後はこう着した状況が続いたが、イングランドは後半16分と36分にもトライを決め、さらにコンバージョンも成功させてスコアを35-3とする。終了間際、前半で2トライを決めたマヌー・ツイランギが、マン・オブ・ザ・マッチに選出されたことがアナウンスされた。ツイランギはサモアの出身。国外出身の選手がいるのは、もちろん日本だけではない。そのままスコアは動かず、4トライを挙げたイングランドはボーナスポイントを獲得して、W杯初戦を理想的な形で終えた。

 ところで今回の取材で、密かに注目していたのが、ラグビーW杯史上初となるドーム開催の成否であった。これについてトンガのキャプテン、シアレ・ピウタウは「ワールドクラスの施設で素晴らしい雰囲気だった」と絶賛。イングランドのエディーHCも「札幌の皆さん、素晴らしい会場をありがとう!」とのコメントを残している。

 札幌でのラグビーW杯は、これにて終了。試合後、海外からの客人たちでにぎわうすすきの界隈の様子を見て、あらためて当地での開催の成功を確信した。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント