堀口恭司、敗れても変わらぬ精神と思考
考えないこと、自分から対応していくこと
「仕事というか、自分の役目みたいな感じです」。衝撃のKO負けから1週間足らずという中、堀口はインタビューに快く答えた
「仕事というか、自分の役目みたいな感じです」。衝撃のKO負けから1週間足らずという中、堀口はインタビューに快く答えた【写真:中原義史】

「世界を震撼させる」


『RIZIN.18』の試合を控え朝倉海はそう語ったが、RIZINとベラトールの世界2冠を成し絶頂期にある堀口恭司を前に、その言葉は現実感を持ちにくかった。


 しかし、日本格闘技史上に残る番狂わせが発生。堀口はキャリアに残る2つの黒星とは異なる、自身初のKOで敗れた。しかし試合から6日後、堀口は取材の場にいつもと変わらぬ快活な様子で現れた。


 敗北をどう捉え、何を思うのか。堀口と話す中で、その強さを支える精神と思考のあり方が見えてきた(取材日:8月24日)。

業界を“盛り上げる”役割

――今日は大変な時期に取材を受けていただいて、ありがとうございます。


 いえ、何でですか(笑)。全然ですよ、全然。まぁでも、面白いじゃないですか。やっぱりずーっと勝っていても。故意的にやったことではないし、朝倉選手が強くて負けちゃいましたけど、こういうのもあっていいかなと思います。次にやったらもっと盛り上がるじゃないですか。だから盛り上げるのに貢献できているし、役割的にはいいんじゃないかって。


――今日のこのインタビューもそうですが、堀口選手はコンディション調整が難しい大会前のイベントであっても、「仕事ですから」と出演を欠かすことはありません。そこに堀口選手の仕事観と言いますか、責任感がうかがい知れたのですがいかがでしょう。


 それは仕事というか、自分の役目みたいな感じです。そういう捉え方をしています。やっぱりそういうことをやる人がいないと、業界って盛り上がらないかなって。自分が今回そういう感じでなっちゃいましたけど、でも盛り上げるためにはいいんじゃないかなと思うんです。


――その“盛り上げる”ということも、17年4月にRIZINで日本に復帰して以来、しきりに言われてきました。何かそう思うようになったきっかけがあったのでしょうか。


 それこそUFC時代は“強ければ認められる、強さが全て”だと思っていたんですけど、そうじゃなくて人気商売だったのが分かってしまったというか。やっぱり仕事なんだな、そこは外せないところなんだというのが分かったから、「自分も変わらないとな」というのがありました。


 最初は「やっぱりそうか」と思いましたけど、別にそれはそれで割り切って「人気も取りつつ強くなれば、両方求めちゃえばいいじゃん」と思って。だからそこは切り替えというか、対応していく感じですかね。別に「変わらなきゃ」とかじゃなく、自分がどんどん変わっていくだけ、合わせていくだけです。


――周囲の現実や世の風潮は変えることができないですし、自分が対応してどんどん変わっていくだけだと。


 まぁそうですね。それは生きてきて学んだことです。人生やっぱりなんだろう、対応していかないといけないので。


――堀口選手は現在、フロリダのアメリカン・トップ・チームで朝から晩まで練習漬けの毎日ですが、その生活を乗り切る秘訣として「“無”になること」とこれまでのインタビューで答えたり、“考えない”ことを自身のYouTubeでも語っていました。そういった対応の仕方も生きていく中で身に付けたことなのでしょうか。


 そうですね、やっぱり対応しないと、極論を言うと辞めることになっちゃうじゃないですか。「これはもたない」で、辞めることになっちゃうのは絶対に嫌だったので、「考えない」という最終的なところに来ました(笑)。考えても本当しょうがないので、全然考えないです(笑)。

あまり考えない、「やればいいじゃん」って

「簡単に言えば、次ぶっ飛ばせばいいだけ」とシンプルな思考を披露
「簡単に言えば、次ぶっ飛ばせばいいだけ」とシンプルな思考を披露【写真:中原義史】

――敗戦となった今回の朝倉戦の後でも「クヨクヨしてもしょうがない」と言われていましたが、考えても仕方のないことを必要以上に考えることはしない?


 負けたから悔しいは悔しいですけど、やっぱり勝ち負けがある競技だから、そこにこだわっていてもしょうがないじゃないですか。「負けちゃった、どうしよう」じゃなくて、簡単に言えば、次ぶっ飛ばせばいいだけじゃないですか。だから、それでいいんじゃないかと。


――たしかに、次回の対戦で勝つより他にないと思います。


 そうです。もう単純に考えて、それでいいんじゃないかと思うんです。


――失敗や敗北に対し、これまでもそういった対応の仕方で乗り越えてきたのでしょうか。


 そうですね。「そんな考えてもしょうがないでしょ、次結果で見せるしかないんだから」って。


――そうはいっても人間ですから、考えなくていいことを考えてしまったりということがありはしないですか?


 基本自分はアホなので、あまり考えないんですよね(笑)。「やればいいじゃん」って、そんな感じなので。


――堀口選手は以前から「ラッキーパンチや打撃が少しでもかするようなことがあれば勝敗が変わってしまう可能性がある、そういう世界で戦っている」ことを話していました。ですが、これまではそうした一発を与えませんでした。それが今回当たってしまったのはどうしてだったのでしょうか。


 やっぱり相手がすごい研究していたし、しっかり「勝つぞ」って恐怖心がそんなになかったじゃないですか。そこでああいうカウンターを入れられた、自分がもらっちゃったという感じですかね。そこが大きなポイントだと思います。

長谷川亮

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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