【RIZIN】悲しみに耐えつつ、好調を貫く堀口恭司 「目の前の相手を倒して」次の戦いへ

長谷川亮

空手の師が死去 葬式参列翌日には練習

扇久保戦を前に公開練習を行った堀口恭司 【写真:チナスキー】

「RIZIN.11」(29日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)で扇久保博正と対戦する堀口恭司が26日、都内で公開練習を行った。

 3分1ラウンドのシャドーで時おり左右に構えを変え、速い踏み込みからのストレート、後ろ回し蹴り、さらにタックルを繰り出して見せ「いつも通り絶好調です」と話した堀口。しかし、15日に空手の師である二瓶弘宇氏が死去し、今回は悲しみを耐えての一戦となる。

「最後に会ったのは帰国してすぐです。ご家族が見守っていて、動くことも話もできない状態だったのですが、自分が病室に入ったら動いてくれて。うれしかったし、勝たなきゃなって思いました」

 RIZINの裏側に迫るドキュメンタリー「RIZIN CONFESSIONS」では師の葬儀に参列し涙する場面もあった堀口だが、「そのことを考えるとどうしてもナイーブな気持ちになってしまうので、考えないようにして試合に集中しています。試合が終わってから悲しめばいいかなと。やっぱり試合は試合、それはそれなので。しっかり割り切ってやります」と、気持ちを切り替え試合に臨むという。

 通常、試合前は地元へ戻り空手の稽古で最終調整を行う堀口だが、空手の選手である二瓶氏の家族の協力を得て今回も同じように調整している。

「もう葬式の次の日から練習していました。それを二瓶さんが望んでいるからって言ってくれてうれしかったです」

5年前の再戦「違いをしっかり見せたい」

秋から始まるキックトーナメント参戦も表明しているが、まずは目の前の試合に向けて集中する 【写真:チナスキー】

 今回の対戦相手・扇久保とは2013年3月に対戦しており、5年4カ月ぶりとなる再戦。当時、修斗世界フェザー級王者であった扇久保に堀口が挑戦者として挑み、扇久保のタックルを切ってパウンドで削り、最後はバックへ回ってチョークスリーパーで2ラウンドに仕留めた。

 しかし扇久保はその後再起を果たすと、修斗で2階級を制覇し、UFCの登竜門と言われるテレビ番組「ジ・アルティメット・ファイター」(TUF)のトーナメントでも決勝に進出。このTUF決勝のティム・エリオット戦こそ敗れたが、それ以外の試合では修斗、VTJを舞台に国内外の強豪を退けており、再び堀口との試合にたどり着いた。

 そんな扇久保について堀口は、「基本的にはあまり動きは変わっていないと思います。やっぱりそんなにベースって変わらないので。ただ精神的にちょっと強くなったのと技術がちょっと上がったんだと思います。でも、それは自分も米国へ行って同じなので、その違いをしっかり見せたいと思います」と語り、自信をにじませる。

 逆にこの5年での自身の成長について問うと、「はっきり言って、今の自分と5年前の自分がやったら相手にならないと思います」と、大勝した5年前からさらに差は開いているとも取れるコメント。扇久保がリベンジに自信を持っていることを告げられると、「試合で見てください。お楽しみに」と舌戦で上回ろうとはしなかった。

「寝技が強い選手なのでタックルをしっかり切って倒されないようにして、倒された時にどう対応するかを練習してきました。寝技もアメリカン・トップチームでやっているので、臆することなく自分で技を仕掛けたり、攻防ができると思います。自分の戦い方をどんな相手に対してもするというのが戦略で、あとは相手の得意技とかをつぶすというだけです」

 なお、今大会では浅倉カンナvs.RENAの再戦にメインを譲った堀口だが、「そこは何も。しっかり勝たないと」と気にした様子はないようで、「浅倉選手が勝つんじゃないかなと思いますけど、格闘技の世界は何が起こるか分からないので」と自身に対しても戒めるように予想した。

 さらに、秋から予定されるキックトーナメントへの出場が注目されているが、これに対しては「モチベーションはありますけど、今はしっかり目の前のことを。目の前の相手をしっかり倒してから次に行こうかなと思ってます」と語り、扇久保戦に集中していた。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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