バスケ日本代表がW杯で腕試し 個性豊かな過去最強チームが格上に挑む

大島和人

波乱万丈な道のりを経てのW杯出場

NBAドラフトでは八村塁が全体9位で指名されるなど、日本のバスケ界も盛り上がりを見せつつある 【Getty Images】

 2016年9月のBリーグ発足を契機に、バスケットボール界には追い風が吹き始めた。今年6月のNBAドラフトでは八村塁がワシントン・ウィザーズに全体9位で指名され、新聞やテレビでも彼の話題が盛んに取り上げられた。来年は東京五輪があり、男女の日本代表はすでに自国開催枠での出場を決めている。

 日本代表(アカツキファイブ)はそんな最高のタイミングで、FIBAバスケットボール・ワールドカップ(W杯)を迎えようとしている。W杯出場は06年の日本大会以来で、予選を経た自力出場は1998年のギリシャ大会以来5大会ぶりだ。

 現在につながる代表強化が始まったのは16年11月。日本は15年のアジア選手権で、18年ぶりの4強入りを達成していた。しかし日本バスケットボール協会は16年11月に長谷川健志ヘッドコーチ(HC)を退任させて、ルカ・パヴィチェヴィッチ(現アルバルク東京HC)をHC代行に置いた。

17年7月より日本代表を指揮するフリオ・ラマスHC 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 17年7月には、前所属チームとの契約を終えたフリオ・ラマス現HCが来日。アルゼンチン代表の強化に長く関わり、ロンドン五輪のHCとして4位入賞の実績もある名将だ。東欧、南米と二人のバックグラウンドは違うが、東野智弥技術委員長は世界の一線級をこの国に引っ張ってきた。

 継続性を断ち切る強引な人事にも思え、結果が出るまで時間もかかった。実際にW杯アジア1次予選は4連敗スタートとなり、いきなりの大ピンチに追い込まれた。しかし18年6月29日のオーストラリア戦が、日本バスケの運命を変えた。

 Bリーグは5月にシーズンを終えており、十分な準備期間を費やしてチームはこの試合に臨んだ。加えて4月に日本国籍を取得したニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)、NCAAのシーズンオフに来日した八村(当時ゴンザガ大)が初のそろい踏みを果たしていた。その結果が世界ランク10位の強豪を79-78で下す番狂わせ。日本はそこから二次予選も含めて8連勝と攻勢に転じ、予選突破を決めた。

日本代表における3人のキープレーヤー

「ビッグ3」と評される渡邊(左)、ファジーカス(中)、八村(右)。日本代表にとって欠かせない存在だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 W杯は8月31日に開幕し、日本は9月1日に初戦を迎える。チームはすでに5試合の強化試合を消化しており、本番に向けた大枠が見えてきた。

 これだけ陣容が充実した日本代表は過去にない。クラブとの調整は必要だったが、米国のシーズン中に呼べない選手も本大会なら招集できる。チームには現役NBAプレーヤーが二人いて、しかも伸び盛りだ。

 八村がいるだけでチームは別物になる。ここまでの成長曲線を見れば、NBAのトッププレーヤーになっても不思議はない才能だ。

 21歳の八村は205センチ・102キロの引き締まった体格と圧倒的なアスリート性を持ち、攻守両面で貢献できる選手だ。跳躍力とパワーに優れる彼はゴール下の攻防で強みを発揮し、速攻の先頭にも立てる。一般的には得点の期待値が低いとされるミドルシュート(遠目の2ポイントシュート)だが、八村はこれを高確率で決める。

 渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)は24歳で、208センチ・93キロのスモールフォワード(SF)だ。守備力が高く、左利きという特性もアドバンテージになる。攻撃面も鋭いドライブ、3ポイントシュートと多彩な「スキルセット」を持っている。

 昨年6月のオーストラリア戦は、NBA入りをかけたサマーリーグ挑戦のため参加しなかった。その後グリズリーズとNBAとGリーグ(マイナーリーグ)の双方に登録できる2ウェイ契約を結び、昨季のNBAでは15試合に出場している。

 ファジーカスはアジア予選でMVP級の働きを見せた老練なセンター(C)だ。ハンガリーにルーツを持ち、米国で育った34歳の彼は12年から川崎でプレーしている。18年4月に日本国籍を取得した。211センチ・111キロの巨漢で、16-17シーズンのBリーグの得点王、MVPでもある。

 足首の古傷が影響した走り方のぎこちなさはあるが、シュートのバリエーションと正確性は圧倒的だ。八村のような跳躍力はないが予測と反応に優れ、リバウンドも強い。

 この3人は「ビッグ3」と評されることが多い。実際に2メートル超の選手が3人並ぶラインアップは今までの日本になかった。しかもそれぞれの持ち味が重ならず、同時に起用しても機能する。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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