バスケW杯へ、日本代表が臨むテストマッチ 短い強化期間は新時代到来の証し

小永吉陽子

史上最強との呼び声高い日本代表。W杯開幕へ1カ月を切り実戦モードに入っていく 【写真:つのだよしお/アフロ】

 9月1日に初戦を迎えるFIBAワールドカップ(W杯)に向けて強化中の日本代表。8月12日からはW杯に出場する強豪国(ニュージーランド、ドイツ、アルゼンチン、チュニジア)と5戦行い、実戦を積みながら強化を図る。まず、8月12日と14日に対戦するのはFIBAランキング38位のニュージーランドだ(日本は48位)。

これまでと変化した強化体制

 16名の候補が発表された7月30日、フリオ・ラマスヘッドコーチは「富樫勇樹の負傷(右手第4中手骨骨折)は残念だったが、それを除けば、日本のベストメンバーを集めることができた」と発表した。W杯予選において4連敗から8連勝を遂げ、自力で21年ぶりとなる出場権を獲得する原動力となったニック・ファジーカス、渡邊雄太、八村塁の『BIG3』が初めてそろい、いよいよ歴代最強ともいえる日本代表がスタートしたのだ。

 ただ、今回の強化合宿は渡邊雄と八村を除いては7月20日にスタートしたが、その期間は1カ月半にも満たず、全員そろっては約1カ月だけの練習で本番を迎えることになる。リーグが5月中旬に終了していることを考えれば、短い強化期間だ。

 これまでの日本代表は、大会前にはできる限りの合宿期間を設け、海外遠征を積んで本番を迎えていた。結果を残した2014年のアジア競技大会(3位)、15年のアジア選手権(現アジアカップ/4位)の成績は「長く活動を行ったことで、最後のほうにようやく組織的なチームができた結果」と前任である長谷川健志ヘッドコーチは手応えを語り、多くの強化時間を要求したものだった。

 そのやり方は連携を深める意味では決して間違ってはいない。しかし今はBリーグができて日程が過密になり、シーズン中に予選が入ったことで変化が起きている。日本協会は、以下の5点を考慮して今回の強化日程を組んだ。

・Bリーグ中に強化合宿をしてW杯予選の準備をした選手には休養が必要
・日本代表のコアメンバーには、オフ期間に自己管理をする力を身につけさせる
・渡邊雄、八村は所属チームの理解のもと参戦する。FIBAの内規では、W杯前の活動日数は最低28日と定められているが、NBA選手である2人はチームと交渉の結果、28日以上は拘束しない(休養日は活動日に含まない/メディアデーは活動日に含む)
・オフ期間に若手育成、サイズアップの強化をして選手層の底上げを図る
・海外挑戦する選手にチャンスを与える

八村(左)、渡邊を念頭に「我々の主軸はNBA選手」と語る東野氏。強化日程も以前の日本代表とは異なる 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 日本バスケットボール協会の技術委員長・東野智弥はこのように狙いを説明する。

「たとえば、6月の育成キャンプから参加した安藤誓哉はアルバルク東京でBリーグファイナルまで戦ったため、もっと休息が必要との声もありましたが、W杯予選に出ていないので『日本代表で戦うまでの道のりは簡単ではない』と経験することが必要でした。そして安藤周人とともに、ジョーンズカップで結果を残して候補選手の枠を勝ち取りました。サイズアップの面ではシェーファー・アヴィ幸樹や渡邉飛勇らも実戦経験が必要でした。

 一方で予選を戦ったコアメンバーには休息が必要で、オフ期間にやるべきトレーニングメニューを与えています。また、比江島慎や馬場雄大はNBAのサマーリーグに挑戦し、それが日本代表のためになることは間違いありません。そして我々の主軸がNBA選手であることからも、これからは彼らとの活動期間が短くてもアジャストできるチーム作りをしなければなりません。集中して鍛える選手たちが底上げを図り、自己管理のもとで鍛える選手と競争していく。リーグの過密日程と人選を見て、新しい強化にトライしながら戦うのが今回のW杯や来年の五輪なのです」

 NBA選手が参戦すること、日本代表の活動以外でも経験値をつけられること、選手層の底上げを図る競争システムが定着してきたこと。こうした強化体制の変化を見ても、自力で出場権をつかんだ今の日本代表は、新しい時代に突入したと言える。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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