バスケW杯へ、日本代表が臨むテストマッチ 短い強化期間は新時代到来の証し

小永吉陽子

富樫負傷で代役は誰に?

ラマスHCが明かした田中大貴のポイントガード起用案 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 残念ながら、主軸の一人である渡邊雄は8月2日に軽度の捻挫をしたことで、ニュージーランド戦の出場を見送ることが濃厚との報道が出ている。そうした状態で、ファジーカスの高さと八村の機動力が加わった中では、遠ざかっていた試合感覚を取り戻し、チームの連携を図ることが第一の目的だ。そして、12名を決める選手選考を兼ねたテストマッチとなる。

 注目されるのは、これまでポイントガードの先発を任されていた富樫勇樹のポジションを、誰がどのように務めるかだ。

 戦術理解の面でいえばキャプテンの篠山竜青が候補に挙がるが、ヨーロッパ勢のサイズを考慮し、ラマスHCは「富樫がケガをする前から、192センチの田中大貴をポイントガードで起用する案はあった。特にピック&ロールでハンドラーになることとディフェンス面で期待している」と言い、実際に田中は昨年11月末のWindow5において、試合の局面でポイントガードを務めたこともある。また、安藤誓の招集は富樫がケガする以前に、ジョーンズカップの活躍から決定していたことであり、「自チームではSGだが代表ではPGをやってもらう」(ラマスHC)と、ベンドラメ礼生を含めた競争となるだろう。

 また負傷したシューターの辻直人のポジションでは、新加入の安藤周が試される。これまで、ラマスHCは3ポイントを機能させる戦術は特別には行ってこなかったが、世界と戦ううえで3ポイントの爆発は必須。さらにサイズアップの面では、シェーファーや渡邉飛ら若手が加入した中で戦力を試さなければならない。ファジーカスと八村がインサイドの大黒柱となる中で、新戦力がどのように絡むかテストする場でもある。

 そして何より、9月のWindow4以来となる八村のお披露目に注目が集まる。すでに練習では自身のモットーである「日本代表でインパクトを与える」というプレーを展開し、練習の強度を上げている。チームをけん引するアグレッシブなプレーを見せてほしい。

ニュージーランドは“因縁の相手”

12日、14日と日本が対戦するニュージーランド。試合前の「ハカ」にも注目だ 【Getty Images】

「Tall Blacks(トールブラックス)」の愛称を持つニュージーランドは、今回でW杯5大会連続出場。過去4大会は決勝トーナメント(ベスト16)に進出し、2002年にはベスト4に名乗りを上げている強豪国だ。

 近年の実力の目安としては、17年のアジアカップで韓国が2回勝利している相手で(韓国3位、ニュージーランド4位)、W杯予選では韓国と1勝1敗。フィジカルが強く、アジアで倒さなければならない相手でもある。アイザック・フォトゥ(203センチ25歳)、兄コーリー(189センチ、30歳)と弟タイ(193センチ、24歳)のウェブスター兄弟、トム・アバクロンビー(198センチ、32歳)らが得点源で、NBAのサマーリーグで馬場とチームメイトだったフィン・デラニー(200センチ、23歳)も来日する。

 ニュージーランドといえば、忘れてはならないのが自国開催した06年の世界選手権だ。当時「世界選手権」と呼ばれた現・W杯にて、日本はニュージーランドに勝てば決勝トーナメント進出となる大一番で、前半で18点リードしてからの大逆転負けを喫した。拮抗(きっこう)した場面で誰もがフィニッシャーになる勇気を持てず、当時の日本バスケ界を象徴する失速したゲームになってしまったのだ。

 あれから13年――日本は進化している。今回のW杯は出場国が24から32に増加し、アジアからの出場枠が「3」から開催国の中国を含めて「8」に拡大した中では、自力出場を果たしたことは“快挙”というよりも“使命”だった。

 むしろ、評価できるのは8連勝した成長の中身だ。「BIG3」が世界基準のプレーを持ち込んだことにより、トランジションが速くなり、ペイントにアタックする戦いができるようになった。これからの強化試合と本番で戦う相手は、すべてアジア予選の2次ラウンドの相手よりも手ごわいチームだ。因縁であるニュージーランドとのテストマッチを皮切りに、本番に向けてチーム力を上げていくことになる。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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